ロンドンとヴェルヴェット

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

ロンドンに行ってもロンドンという駅はないんですね。東京に東京駅があるのと、少し違う。
そういえば、パリ駅というのもない。
では、どうしてロンドンにロンドン駅がないのか。これは「どこから」旅発つのかという発想と、「どこへ」旅発つのか、という発想の違いなんでしょうね。
たとえばロンドンに、ユーストン駅がある。これはユーストン方面に行くための駅。だから、ユーストン駅。
ユーストン駅から列車に乗ると北上して、途中乗り換えて、スコットランドやアイルランドに行くわけです。
ユーストン駅の開業は、1837年というから、古いですね。日本でいうと、天保六年。そうして1840年代以降、鉄道は花形産業に。
花の鉄道。で、どうなったのか。鉄道会社の株の売り買いが流行になる。鉄道株で大儲けした人もあり、大儲けしなかった人もあり。
鉄道株の相場師。これをその時代の言葉で、「スタッグ」 stag といった。なぜか「牡鹿」と呼んだんですね。もっとも女相場師なら、「ドゥ」doe といったそうですから、しゃれていますよね。で、投資界のことを、「スタッギング」となったんだそうです。
ロンドンのキャペル・コートに株式取引所がありまして、ここで売り買いをする。なんですが、そのための貸衣装屋があったらしい。
1845年『パンチ』誌 10月25日号に、その広告が出ています。それは「ナタン商会」という店。もちろんそれぞれの身分と職業にふさわしい服装を貸してくれる。そのよりふさわしい服装を着て、証書を作りに行った。まあ、そういう時代だったんでしょうね。
たとえばウエストエンドのハイカラ紳士のための服装としては。モーニング・コートと、汽車旅行用のズボン。それにヴェルヴェットのちょっきが用意されていたそうです。
借りるかどうかはさておき。ヴェルヴェットのチョッキ。悪くないですね。今度ロンドンに行く時には、ビロードのチョッキでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone