アスパラガスとブートジャック

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アスパラガスは美味しいものですよね。さっと茹でて、マヨネーズを添えたりして。あるいはチーズをたっぷりのせて。天火で焼きますと、とろーりとして。
レストランのメニューに、「ナントカカントカ・アルジャントゥイユ」と書いてあったなら。たぶんそれは、アスパラガスの料理。その昔、フランスではアルジャントゥイユのアスパラガスが珍重されたんだとか。
アルジャントゥイユではなくて、ベレでの話。ベレはフランス中部、リヨンからも遠くはない小さな町。小さな町なんですが、かのブリア=サヴァランの生まれた所として、有名。そしてこの話は、ブリア=サヴァラン著『美味礼讃』に出ているのですが。
昔むかし、ベレの町に教会があって。クルトワ・ド・キャンセーという大司教がいらして、食通。ことに、アスパラガスが大好物。
ある時、教会の庭に、小さなアスパラガスが顔をのぞかせている。めざとくそれを見つけた庭師、大司教に報告。
さあ、それからというもの、アスパラガスが成長がうれしくてたまらない。毎日のように、庭を見てまわる。日ごとにアスパラガスは大きくなって。
大司教は村の鍛冶屋に頼んで、アスパラガスを切りとるための、小刀を注文する。
さて、ついに、アスパラガス収穫の時が。特別注文の小刀を手に、庭へ。立派なアスパラガスへ手をかける。と、それは本物そっくりの、木の彫物だった。
手先の器用な、ロッセ修道士の凝ったいたずらだった。キャンセー大司教はこの木製アスパラガスに大笑いして、それを食堂に飾ったという。
アスパラガスが出てくるユーモア小説に、『がんばれガートルード、または純真な十七歳』が。 スティーヴン・リーコックの作。

「三番目のは晩生のアスパラガスを一束……」

これは家庭教師の、ガートルードに庭師が贈物をする場面。また、こんな描写も。

「ある日、ガートルードが書斎の前を通りかかると伯爵は靴ぬぎ器 ( ブートジャック ) を……」。

ブートジャックは、脚にぴったりしたブーツを簡単に脱ぐための道具ですよね。
さて。ブートジャックは用意したし。美味しいアスパラガスを食べに行くとしましょうか。

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