ポオとベレー

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

ポオといえば、エドガー・アラン・ポオでしょうか。
ポオはミステリ生みの親なんだそうですね。もっともその時代には、「ミステリ」の言葉ではなかったでしょうが。『モルグ街の殺人』とか、『盗まれた手紙』だとか。でも、その正体は、優れた詩人だったでしょう。『ユーレカ』は詩での代表作でしょう。
ポオが好きだったひとりが、小林秀雄。小林秀雄はポオが好きだっただけでなく、その翻訳も手がけています。昭和四年ころ。ということは、小林秀雄が東大を卒業したすぐ後なんでしょう。

「僕はポーが大好きでね、全集を神田で買って読んでいたら、あんな話があったので、大変面白いと思って……」

「僕」が、小林秀雄であるのは言うまでもないでしょう。「あんな話」とは、『メルツエンの将棋指し』のこと。ポオが、1836年に発表した短篇ですね。小林秀雄は、『メルツエンの将棋指し』を訳している。もっとも、無署名で。昭和五年の『新青年』に掲載されたものです。その頃の翻訳料、原稿用紙一枚、25銭くらいだったとも。
これは江戸川乱歩との対談中での話なんですね。乱歩との対談でポオの話が出てくるのも、面白い。対談そのものは、昭和三十二年『宝石』九月号に掲載されたものですが。
この対談中には、F・W・クロフツの話も。小林秀雄がクロフツの『樽』を読んで、ミスを発見。そのミスを江戸川乱歩に告げたところ。
「ああ、それは有名なミスですよ……」
と、言われてしまったとか。まあ、それはともかく、ミステリ愛好家は少なくないのでしょうね。
ミステリ愛好家の出てくるミステリに、『猟犬クラブ』が。ピーター・ラヴゼイが、1996年に発表した物語。この中に。

「黒い革ジャケットに、濃紺のコーデュロイのズボン、そして黒いベレー帽をかぶった……」

これは「猟犬クラブ」の会員、ルパート・ダービーの姿。「猟犬クラブ」が、ミステリ愛好家の会なんですね。
さて、黒いベレーをかぶって。ポオの本を探しに行くとしましょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone