川端と玉虫

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川端で、作家で、ということなら、川端康成でしょうね。
川端康成がノーベル文学賞を受けたのは、昭和四十三年のこと。その頃の話なんですが。銀座に「エスポワール」というバアがあって。
この「エスポワール」に川端康成が行ったことがあるんだそうです。顔ぶれは康成、山本健吉、佐多稲子、柴木好子の四人。
この四人がエスポワールの席に着くと、ホステスが来る。そのホステスを見て、佐多稲子が康成にひと言。「似ていますね……」。これで康成はすべてを了解したという。
昔、佐多稲子は浅草の「聚楽」という店に勤めていたことが。カフエであり、レストランであり。その店に夏江という女性がいた。康成に夏江を贔屓にした。
つまり佐多稲子は川端康成に、「夏江さんに似ていますね……」と、言いたかったのでしょう。佐多稲子はこの時代の経験をもとに、『レストラン・洛陽』を仕上げています。
佐多稲子が昭和二十一年に発表した短篇に、『曲り角』が。この中に。

「玉虫色のレインコートの下に学生服が見えている。」

と、あります。これは二十七歳の男性の様子。「玉虫色」は、イリデッセントのことでしょうね。
なにか玉虫の服を着て。川端康成の本を探しに行くとしましょうか。

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