志ん生とパナマ帽

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志ん生は、五代目古今亭志ん生のことですよね。
志ん生は名人と謳われた落語家。でも、最初から名人だったわけではないらしい。それは生涯のうちに何度も改名したことからも、想像できるかも知れませんが。
明治の終わり頃の話。
そのころ、前座だった志ん生自分の出を終えて帰ろう、と。耳をすますと雨の音が。でも戸を開くと、満天の星空が。
雨の音と聴こえたのは、川の水音。ちょうどその時、高座に『かじ沢』がかかっていた。名人、円喬の噺。この中に「早川の急流……」が出てくる。その擬音が真に迫っていた。
若きの志ん生、この川の音から落語に心を開くようになったという。
志ん生がお好きだったひとりに、遠藤周作が。一時期、遠藤周作は落語を聴きながら眠りに入る習慣があったらしい。

「「小説の作法と同じなんだなあ」
志ん生の話し方を聞きながら、私はしみじみと思う。」

遠藤周作著『心の航海図』に、そんなふうに書いています。遠藤周作の代表作に、『沈黙』が。1966年の発表。
1966年にデビューしたのが、ロス・トーマス。ロス・トーマスが1988年に書いたのが、『五百万ドルの迷宮』。この中に。

「彼は素晴らしい白絹のスーツに、パナマ帽を被り……」

「白絹のスーツ」はともかくとして。
パナマ帽を被って、志ん生のレコードを探しに行くとしましょうか。

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