岡山とビロード

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岡山には美味しいものがたくさんあるんですってね。
昔の話ではありますが、「初平」の桃。岡山の松田利七が丹精をこめた桃。桃の木の根に唐墨を与えたという。その年のいちばんの桃は、宮中に献上されたものです。
岡山ゆかりの作家、吉行淳之介が「日本一」と褒めた鮨屋「魚正」だとか。
岡山の人は舌が肥えているんでしょうね。だからその舌に納得してもらえる美味が生まれるんでしょう。
吉田健一著『私の食物誌』に、岡山の七面鳥の話が出てきます。

「七面鳥にそういう料理の仕方のあるのを聞いたことがないからこれは岡山で誰かが発明したものに違いない。」

「そういう料理」とは、どうも蒸し焼きであるらしい。「鯛の浜焼き」のターキー版。吉田健一はある時、人からこれをいただいて、その美味に一驚したそうです。
『私の食物誌』には当然のように、ロンドンの話が出てきます。
カフェ・ロイヤルについて。今は「ホテル・カフェ・ロイヤル」になっていますが、昔はカフェだった。カフェからレストランになり、レストランからホテルになったわけです。
昔、レストランの時代に「カフェ・ロイヤル」を贔屓にしたのが、ホイッスラー。ホイッスラーは十九世紀に主にロンドンで活躍した画家ですよね。
ホイッスラーは毎日、カフェ・ロイヤルにランチを食べに。作業着のままで。ホイッスラーはいつも純白のビロードの上っぱりで絵を描いた。その純白に、絵具のかけらも飛んでいない。たぶんホイッスラーとしては、一点の染みもないことが、絵師としての誇りだったのでしょう。
なにかビロードの服を着て。岡山の美味しいものを食べに行きたいものですね。

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