梨とチョッキ

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梨は美味しいものですね。第一、歯ざわりと潤いと甘みの塩梅が、なんともいえません。それほど美味しいのに「ナシ」とは残念無念。
それで、「有りの実」と言い換えたんでしょうね。泉 鏡花なんかを読んでいましても、「有りの実」が出てきます。「ナシ」というより、「有りの実」のほうが、雅なんでしょう。
洋梨のひとつに、ラ・フランスがあります。文字通り、フランス生まれの梨なので、「ラ・フランス」。
1864年ころ、フランスの、クロード・ブランシェが発見した品種なんだそうです。日本にも明治期に伝えられているんだそうですが。
このラ・フランスがお好きだったのが、プルースト。二十世紀最高の作家とされる、マルセル・プルースト。プルーストは小食で、一日一食。でも、果物はお好きで。オスマン通りの果物屋「オジェ」で買ってきた洋梨を召し上がったという。
プルーストはその著『失われて時を求めて』の中で。

「正真正銘のエレガンスは、偽のエレガンスよりずっと簡素に近い」

そんなことを言っています。
ある時、プルーストは赤い絹のチョッキを作らせた。裏地には、白の絹。でも「派手だ」と言って、一度も着なかったそうです。
なにか上品なチョッキを着て。美味しい梨を食べに行くとしましょうか。

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