第三とスリーピース

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「第三」とはじまる映画に、『第三の男』があります。これはもう『第三の男』と訳すしかありません。原題もまた、『ザ・サード・マン』なのですから。
『第三の男』といえば、誰だってまず音楽を想い浮かべるでしょう。なにか異国的な、なにか愁いを含んだような。もちろん、アントン・カラスのツィターですよね。
1948年。脚本の、グレアム・グリーンはウィーンに。その時、偶然入った酒場で、アントン・カラスがツィターを弾いていた。
よく『第三の男』は、グレアム・グリーンの「原作」と言われるのですが、「脚本」。映画のために、書いた。というよりもほんとうのことで言えば。グリーン・グリーンとキャロル・リードとの合作。ふたりはホテルに籠って、侃々諤々のうちに完成したんだそうです。
それに、有名な観覧車でのオーソン・ウエルズの「………鳩時計じゃないか」も、即席の科白。名作とは案外そんなものかも知れませんね。
ウィーンが出てくるミステリに、『スパイよ、さらば』があります。フリーマントルが、1980年に発表した物語。

「ガラス張りの喫茶店で、杏の実をのせたチョコレートケーキ、ザッハトルテと紅茶を 前に………」

その様子を、英国人スパイの、フーゴ・ハートマンが眺めている場面。でも、実際は。ウィーンのカフェでは珈琲を飲む人が多いようですが。また、こんな描写も。

「隆とした三ツ揃いも着癖がついて新調の堅さが取れ、しっくりと体に馴染むのと同じで………」。

これは物の喩え。ハートマンにヨーロッパの街は肌に合う、言っているのです。が、ハートマンは実際にスリーピース・スーツ好き。チョッキがないと「ズボンの前が開いている感じ」が、するんだそうですね。

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