水とカシミア

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水にもいろんな水があるんでしょうね。
たとえば、湧き水とか。珈琲一杯淹れるにも自分の好きな湧き水を汲んでくるとか。まあ、夢物語ではありますが。
富士の裾野に、忍野八海があります。ここにも湧き水があって、美味しい。富士の山頂に雪が降り積もって。それが溶けると長い地下を通って。ざっと二十年かかって湧き水となるんだそうですね。つまり二十年間、濾過していることになります。
忍野八海は一例で、泉の湧き出る景色は美しいものです。原泉。
原 泉。この場合は人の名前。「はら・せん」と訓みます。往年の女優。名脇役。なんとも存在感のある女優でしたね。
たとえば1988年の映画、『マルサの女』にも。もちろん、伊丹十三監督の映画。この映画に不思議な老婆が出てくる。この老婆に扮するのが、原 泉。さすがに、伊丹十三ならではの、配役ですね。
原 泉のご主人だったのが、中野重治。代表作は、『甲乙丙丁』でしょうか。月並みな形容ですが、燻銀のような文章を書く作家でした。
この中野重治と親交があったのが、柴木好子。柴木好子は『中野重治の色紙』と題する随筆の中で、その想い出を語っています。

「お正月には夫婦して臼でお餅を搗く。丸餅の美味しさは格別で、無心して数個いただいてくると、「中野先生のお餅」といって、もったいなくて、惜しみながら…………」

柴木好子は同じ随筆の中で、中野重治のスェーターについても。

「原さんが吟味するので、セーターなんかもカシミアのいい色合のを何気なく着ているのだった。」

「何気なく」というのが、いいですね。カシミアはカシミア山羊の、特別の、しなやかな毛の繊維ですね。

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