佳人とスリッパ

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佳人といい、麗人といい、美人といいます。
「解語の花」とも。あまりにもお美しい花かと思っていたなら、人の言葉が理解できるのですね、という意味。で、解語の花。
誰もが一様に「美人です」と認めた美人は、リリー・ラントリーでしょうか。本名は、エミリー・ブレトン。でも、1877年にジョン・ミレーが彼女の肖像画を描いた。この時の絵の題が、『ジャージー・リリー』。ジャージー島に咲く百合の花。この絵が人気になりまして、みんなが、「リリー・ラントリー」と呼ぶように。1874年に、エドワード・ラントリーという富豪と結婚していたからです。
このリリー・ラントリーに夢中になったおひとりに、英国皇太子が。そんなわけでリリー・ラントリーはヴィクトリア女王にも謁見が許されています。1881年からは、舞台女優に。これはなんでもオスカー・ワイルドの薦めだったとも。
コナン・ドイルのホームズ物に、『ボヘミアの醜聞』があります。1891年『ザ・ストランド・マガジン』7月号に発表。この中に、「アイリーン・アドラー」という歌手が出てきます。が、このアイリーンはリリー・ラントリーをモデルにしているのではないか、との説もあるようです。少なくともコナン・ドイルも、リリー・ラントリーには無関心ではいられなかったのでしょう。
コナン・ドイルの作に、『まだらの紐』があります。この中に。

「素足に踵のない赤いトルコ・スリッパを突っかけ………」。

という描写があります。これは、ロイロット博士の自宅での様子。「トルコ・スリッパ」。先の尖った、刺繍のある、モロッコ革の、スリッパを想像してしまうのですが。

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