ホテルとブラック・ジャケット

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ホテルは十八世紀にはじまっているんだそうですね。少なくとも1774年の1月にはホテルがあった。
「ロウズ・グランド・ホテル」がその名前です。ロンドンのコヴェントガーデンに。キング・ストリート43番地に。
もともとはラッセル卿の屋敷だったところで。それを客船の内部のように替えて、ホテルにしたんだそうです。デイヴィッド・ロウがはじめたので、「ロウズ・グランド・ホテル」。
デイヴィッド・ロウはホテルをはじめる前、美容師だった。ある時、お客のひとりが。「どこかロンドンで泊まれるところはないか知らね……」と、話しているのを聞いて、はじめたという。
では、ホテルの前はどうしていたのか。「イン」 ( 居酒屋 ) 。インを利用した。インの二階がたいてい簡単な宿泊所になっていたんですね。
「ロウズ・グランド・ホテル」については、当時の文人、ホーレイス・ウォールポールがその人気ぶりを書いています。たぶん好評で迎えられたのでしょう。
英国のホテルの話が出てくるミステリに、『二つの死』があります。1930年代に、ディクソン・カーが発表した物語。この中に。

「宿泊料の支払いを簡明化し、三十歳のときには、彼のホテルは、万人が気楽な気持で利用するところとなった。」

「彼」とは、トニー・マーヴェルという実業家。このトニー・マーヴェルのおとうとが、スティーヴン・マーヴェル。外科医という設定。スティーヴンはどんな恰好なのか。

「黒の上着に縞ズボンで、医者の街ハーレイ・ストリートの医院で、磨き上げた診療デスクのわきに、取りすました顔で立つスティーヴンの姿を。」

医者だから、というわけではありませんが。ブラック・ジャケット&ストライプト・トラウザーズ。二十世紀のはじめにはよく使われたものです。
一説に。ブラック・ジャケット&ストライプト・トラウザーズは、十九世紀末に、英国皇太子が考案したと伝えられています。エドワード七世が皇太子であった時代に。もちろん、モーニング・コートの代りだったのです。

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