マインツとマップ・ポケット

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マインツは、ドイツの街の名前ですよね。ドイツにはマイン川とライン川とがあって。その合流点にあるのが、マインツなんだそうです。
マインツはその昔、グーテンベルクが生まれた場所でもあります。ヨハネス・グーテンベルク。グーテンベルクが今の活版印刷を発明したと、考えられています。1439年頃のこと。
では、どうしてグーテンベルクは活版印刷を発明したのか。それ以前にはたいてい「手書き」で、手書きがあまりにも苦労の多い仕事だったから。
手書きで本を作った。ですからこれを、「写本」と言ったんですね。中世に、どうしても必要だったのが、聖書。グーテンベルク以前の聖書はまず例外なく、「写本」だったのです。僧侶が羽根ペンで書き写す。だいたい一冊の聖書を書き写すのに、一年はかかったそうですね。当然、高価。ロールスロイス並みの値段だった。
もし聖書の必要がなければ、グーテンベルクの活版印刷も生まれてはいなかったかも。それはともかく、グーテンベルクの活版印刷によって、聖書が高級ベンツくらいの値段になったのは、間違いありません。これを、「グーテンベルク聖書」と呼ぶわけですね。
ただ「グーテンベルク聖書」は、それまでの「写本聖書」をお手本としたものですから、まことに美しい。金彩、銀彩をはじめ、色とりどりの彩色がなされています。「グーテンベルク聖書」はほとんど値がつけられないほど、貴重なものです。日本では慶應大学に「グーテンベルク聖書」の所蔵があります。
マインツの話が出てくるミステリに、『ロシア皇帝の密約』があります。じぇふ・アーチャーが、1986年に発表した物語。この中に。

「彼女の家族、マインツ大学の休暇を利用して始めたアルバイトのことなどを知った。」

これは、「ハイディ」という女性についての話なんですね。また、こんな描写も。

「アダムは身体を折ってトレンチコートをとりあげ、ほかの者の目につかないように注意しながら、マップ・ポケットからイコンを取りだした。」

アダム・スコットは、『ロシア皇帝の密約』の主人公という設定。
「マップ・ポケット」は、読んで字のごとく、地図を入れておくための、大型ポケット。トレンチ・コートは軍用としてはじまっていますから、地図が必要だったのは言うまでもでしょう。もちろんグーテンベルク聖書だって入れておけるでしょうが。

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