ドレスとドビー

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ドレスはまあ、ちょっとおしゃれなワンピースといったところでしょうか。ドレス dress であるのはいうまでもありませんが。それにしてもいろんな場面で使われる言葉ですね。
「ドレス」はだいたい1300年頃からの英語なんだとか。もともとはラテン語で、「ディレクトゥス」 directus から来ているらしい。ディレクトゥスは、「まっすぐ」の意味。もしかすれば、「まっすぐにした服」のことを、「ドレス」と呼んだのでしょうか。
「ドレス」には「正装」の意味もあって。劇場での「ドレス・サークル」は、「特等席」のこと。ここは昔、正装の紳士淑女が座ったからなんだそうですね。
「ドレッシング」には、「着付け」の意味もあります。その一方で、サラダのための「最後の仕上げ」としても使われます。
「ドレス・リハーサル」は、「最後の本げいこ」のこと。ちゃんと舞台衣裳を着けてのおさらいだから。
「ドレサージ」 dressage は、「高等馬術」の意味。「ドレス」には「馬の手入れ」の意味もあるようですね。馬を上手に操るには、手入れが欠かせないということなのでしょうか。
「ドレス・シールド」は「汗よけ」。そうかと思えば「ドレス・カット」なんて言い方もあったりして。「ドレス」はほんとうに意味の広い言葉ですね。
「ドレス」が出てくるミステリに、『メグレと殺人者』があります。もちろん、ジョルジュ・シムノンの名作。

「黒い絹のドレスの下は………」。

黒い、シルクの、シース・ドレス。いいですねえ。また、こんな描写も出てきます。

「花模様のネクタイが好きな男はカラーのワイシャツ、少なくともストライプか、小さな模様の入ったワイシャツを選ぶとは思いませんか?」

これはあるおしゃれな男についての、メグレの部下の刑事の科白なんですね。ところで、「小さな模様の入った」とは、何か。私は勝手にドビーのシャツを想っているのですが。
ドビー dobby は細かく織柄のあるシャツ地。1830年頃に。ロバート某が考えたので、その名前になったとか。ロバートの愛称が「ドビー」だったから。はじめのドビーは、絹の小紋がだったそうですね。
時には、ドビーのシャツも着てみたいものですね。黒い絹のドレスの女に出会えるかも知れませんが。

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