維新とヴォイル

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維新といえば、明治維新でしょうね。むかしの人は、「ご維新」といったんだそうですね。
江戸が明治になって、というだけでなく。それまではご禁制であった唐物が許されるようになって。すべての暮らしが、一変。とにかく西洋服を着てもよろしいというだけでも、大革命であります。
明治維新の次に日本を変革させたのが、大地震。関東大震災。大正十二年九月一日の昼頃。この大震災が、江戸の気分、明治の空気をすっかり変えてしまったのです。
大正十二年九月一日。谷崎潤一郎は何をしていたのか。この日、谷崎潤一郎は、箱根にいた。箱根の「富士屋ホテル」に滞在。ここで小説を書くために。谷崎潤一郎は殊の外、地震がお嫌いだったお方。で、谷崎潤一郎はその時、どうしたのか。とりあえず、大阪へ。列車は不通なので。海軍が特別に小田原に軍艦を着けてくれることに。この軍艦乗って、大阪へ。
大阪では落ち着く場所が決まるまで、今 東光の家に世話になっています。今家でも、余震のある度、谷崎は起きだして、「大丈夫か!」と、声をかけたという。よほど、地震が苦手だったのだったしょう。
谷崎潤一郎の小説に、『卍』があります。昭和六年に、単行本になっています。このなかに。

「更紗模様のヴオイルの服頭から被つて・・・…」。

ヴォイル voile は薄い、平織地。これは「ヴェイル」veil と関係があるんだそうですね。以前には多くヴェイルに用いられた生地なのでしょう。
ところが。今 東光の、『痩せた花嫁』にも、ヴォイルが出てきます。『痩せた花嫁』は、大正十四年の発表。

「或は、透明なボイルの単衣に包まれてゐる餅肌と………」。

小説に描かれた「ボイル」としては、かなりはやい一例かと思われます。
今、ヴォイルのシャツがあったなら、着てみたですよね。

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