コクトオとコオデュロイ

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コクトオはもちろん、ジャン・コクトオですよね。フランスの二十世紀を代表する作家。でも、「作家」のひと言ではかたずけられないところに、コクトオの独特があります。
たしかにコクトオは詩人であり、小説家でありました。が、劇作家でもあり、画家でもあり、映画監督でもありました。
若き日のコクトオは、マンデスと仲良しだったという。カチュール・マンデスは、フランスの十九世紀末に活躍した詩人。ランチにオムレツを食べるという理由で、毎週の土曜日にマンデス家を訪ねたんだそうです。そんな時にマンデスからコクトオが聞いた話。
若い頃のマンデスは、美男子で、ハイネに似ていたらしい。ある日のこと、マンデスがハイネの家を訪ねると、マダムが出てきて、卒倒。重病で寝ているはずの夫、ハイネが立って歩いていると思って。それくらいマンデスは、ハイネに似ていたんだそうですね。
コクトオから見ての若い詩人は、ラディゲ。レイモン・ラディゲ。ラディゲは天才中の天才で。十六世紀の古文で、いとも容易く詩を編むことができたという。
ラディゲをコクトオに紹介したのは、やはり詩人の、マックス・ジャコブ。この時の様子を。

「コクトオはその詩を読んだ。陰翳の深い単純さに一驚を喫した。
「磨きだされた貝殻のようだ」とコクトオは思った。

三島由紀夫著『ラディゲの死』の一節には、そんな風に出ています。『ラディゲの死』は、昭和二十八年の発表。昭和三十二年に発表されたのが、『女方』。この中に。

「冬だというのによれよれの単衣のレインコートを着て、それを脱ぐと、煉瓦色のコーデュロイの上衣を着ている。」

これは「川崎」という名の男の風情。「煉瓦色」は、ブリック・カラーでしょうか。太コールでしょうか、細コールでしょうか。
いずれにしても、一着は、コオデュロイのジャケットは欲しいものですね。

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