美人とビーヴァー

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

美人は、佳いものですね。ですから、佳人とも言います。麗人とも言います。たとえば、小野小町。このお方、絶世の美人だったそうですね。
小野小町は、平安時代の歌人。今から千年以上も前のこと。しかも写真のない時代でもあるのにもかかわらず。「小町」は今なお、美人の形容になっています。

花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせし間に

これは小野小町の詠んだ歌なんだそうですが。
話は変わりますが。1900年頃のアメリカの話。NY、マンハッタンに。お美しい少女がひとり。この美少女に恋をしたのが、アーヴィング。後に大作家となるワシントン・アーヴィング。
ところが、この美少女は、十七歳で、世を去る。1907年のこと。で、ワシントン・アーヴィングは、どうしたのか。
可憐な少女の髪を少し分けてもらって。アーヴィングは秘密の小箱を作って、美少女の髪を中に。アーヴィングはいつもこの小箱を身に着けて、生涯結婚することがなかったそうですね。
ワシントン・アーヴィングが、1822年に発表した小説に、『ブレイスブリッジ邸』があります。『ブレイスブリッジ邸』は、十九世紀はじめの、英國が背景になっています。この中に。

「彼女は前の世紀に乗馬の風習であったつばの広い白のビーバー帽をかぶって紐を顎の下で結んでおり…………」。

と、書いています。つまり、十八世紀の英國では、乗馬にビーヴァーの帽子を被ることがあったものと思われます。
ビーヴァーは、水辺に棲む小動物。その毛皮は水に強く、美しい光沢を持っていて。ここから、「ビーヴァー・ハイハット」。後のシルク・ハットが生まれたのですね。
偉大なる作家、ワシントン・アーヴィングもまた、ビーヴァー・ハイハットの愛用者であったこと、いうまでもないでしょう。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone