サフランと刺し子

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サフランの香りは、食欲をそそるものですよね。たとえば、サフラン・ライスだとか、ブイヤベースだとか。
あるいはまた、パエリヤ。サフランの入らないパエリヤはパエリヤとは言いたくないくらいのものであります。サフランは味という以前に、あの黄金色、あの黄金の匂いがたまりません。
ただ、サフランはこの上なく高価でもあります。人はキャヴィアが高いという。フォアグラが高いという。トリュッフが高いという。でもねえ、グラムあたりの値段で申しますと、サフランの足もとにも及ばないのであります。
もっともサフランをグラムで、キロで買おうという一般客は少なくでしょうが。それにサフランはスプーンで掬って食べることはしない。ぬるま湯に放っておけば、いろんな料理の応用が効くものではありますが。
料理といえば、檀 一雄でありましょうか。昔むかし、山の上ホテルにカンズメになって。部屋の中に七輪持ち込んで魚を焼いたほどの、料理好きであります。
一時期、檀 一雄はスペインに暮らしたことがありまして。スペインで、檀 一雄でとなれば、サフランの出てこないはずがありません。

「あのサフランの黄色い色と匂いがなくなったら、まるで、スペインから火が消えてしまったように淋しく感じられるだろう。」

檀 一雄著『美味放浪記』に、そんな風に書いています。檀 一雄の家に行ってご馳走になった人に、庄野潤三がいます。

「私は檀さんのお宅で韮を用いた料理 ( 豚肉と韮ともやしを一緒にフライパンでいためたものであった ) を御馳走になって、以来韮を好むようになった。」

庄野潤三著『自分の羽根』には、そのように出ています。『自分の羽根』は、随筆集。『自分の羽根』には、こんなことも語られているのですが。

「他の若い連中ならジャンパーを着るところだが、彼は刺子の半纏を着て来る。」

「彼」とは、庄野潤三が贔屓にしていた豆腐屋のお兄さん。「刺子の半纏」いいです。私の尊敬する星野醍醐郎は、以前「キャズウエル・マッシー賞」というのを、受けたことがあります。その賞の対象となったのが,刺し子のケープだったのです。
ぜひ一度、刺し子のケープを着て、パエリヤを食べに行きたいものであります。

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