スペインと透かし

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スペインもまた、魅力ある国ですよね。第一に、オレンジが美味しいお国柄ですから。
昔むかしの日本では、「いすぱにあ」と呼んだんだそうですね。これは現地での「エスパニア」に倣ったもの。今の「スペイン」は英語での表現。本国では「エスパニア」多いものの、特に名称が定められているわけでもないようです。さすがは大国、おおらかではありませんか。
スペインを旅した人に、ゴーティエがいます。フランスの文人。テオフィル・ゴーティエ。ゴーティエの代表作、『モーパン嬢』などはお読みになったことがおありでしょう。
テオフィル・ゴーティエは、1840年5月5日。午後4時に巴里を発って、スペインに向かっています。でも、どうしてゴーティエはスペインに旅することになったのか。
ある時、ゴーティエ、ごく軽い気持で。「スペインにでも行ってみたいなあ」と言った。その話がまわりまわって。「ゴーティエがスペインに行った」となって。友だちに会うごとに、「スペインはいかがでした?」と訊かれるまでに。
「それでは!」というので、ほんとうにスペインを旅することになったんだとか。1840年5月5日。友人の、ウージェーヌ・ピオとふたりで、ざっと五カ月の間、スペインを巡っています。行きは陸路、帰りは海路を使って。陸路とは、郵便馬車に乗って。最初の夜は、ボルドオに一泊しています。テオフィル・ゴーティエ著『スペイン紀行』に詳しく出ているのですが。
スペインでのゴーティエは、当然のように「マホ」になっております。「マホ」はスペインの言葉で、「洒落男」に意味。その女性形が、「マハ」。「洒落女」。スペインの画家、ゴヤに、『裸のマハ』と、『着衣のマハ』とがあります。あの「マハ」は固有名詞ではなくて、「伊達女」のことなんだそうですね。
それはともかく。ゴーティエもまた、「マホ」に。それというのも、当時は闘牛を観に行くには、闘牛見物の服装があった。で、ゴーティエも闘牛見物の衣裳を身に着けた。

「とんがり帽子、刺繍入りの上着、透かし細工のボタンのついたビロードのチョッキ、赤い絹の腰帯……………」。

ゴーティエの得意そうな顔が見える筆致であります。「透かし細工のボタン」。いいですねえ。
たぶん動物の角なのでしょう。そこに凝った細工が施されていて。透かし模様になったいる。憧れます。こうなるとボタンもほとんど美術品ですよね。美術品のボタンのついた上着が着てみたいものです。

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