詩とシルク・トゥイード

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詩は、佳いものですよね。詩は、心の間欠泉。たぶん人が生まれた時から、あったのでしょう。詩は、心の呟き。詩は、心の溜息。詩は、心の歓び。

もっと強く願っていいのだ
わたしたちは明石の鯛がたべたいと

茨木のり子の『もっと強く』という詩は、そんな風にはじまります。茨木のり子の『もっと強く』に触れると、「明日、もう一日だけ生きてみよう」と思ってしまうではありませんか。詩とは、勇気づけられるものであります。
その昔、「詩人の中の詩人」と謳われたのが、英國のエドマンド・スペンサー。エドマンド・スペンサーは、十六世紀に活躍した詩人。1599年に、四十八歳で世を去っています。エドマンド・スペンサーのお父さんは、倫敦の仕立屋だったそうですから、まんざらファッションとも無関係ではありません。

乙女なる女王に相応しく
緋の衣、白の毛皮に身を装い

エドマンド・スペンサーは『牧人の暦』に、そのように詠んでいます。
エドマンド・スペンサーとミステリの関係は。ロバート・B・パーカーでありましょう。ロバート・B・パーカーといえば、「スペンサー・シリーズ」で。ボストンの私立探偵、スペンサーが主人公となる物語。スペンサーはなぜか「スペンサー」だけの名前で。人に問われると。
「詩人のスペンサーと同じ綴りだよ」。
なんてことを言うのであります。つまり、Spenser ではなくて、Spencer なんだと。このスペンサーが活躍する物語に、『ポットショットの銃弾』があります。この中に。

「私はその紙を折り畳んで、タフィ色の優雅な夏のシルク・ツイード・ジャケットの内ポケットに入れた。」

「私」とはもちろん、スペンサー。スペンサーはこの物語の中で、シルク・トゥイードの上着を羽織っているんですね。
「もっと強く願っていいのだ
シルク・トゥイードが着たいと」

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