書生とシャツ

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書生というのが昔にはあったんだそうですね。「書くために」、「生きる」と書いて、書生。えらい学者になるための勉強生というところから、はじまっているのでしょうか。
書生は昔にあって、今はない制度でしょう。いや、制度ともいえる習慣。まあ、明治語のひとつでしょう。
書生はある面からいえば、食客、居候。たとえば学者先生の家に、只で住まわしてもらう。その代わり、雑用、力仕事の手伝いのある時にはやらせて頂く。それが、書生。
書生を主人公にした小説が、『当世書生気質』。坪内逍遥が、明治十八年から翌年にかけて書いた物語。

「去年の夏買ひしと見ゆる、へこへこになりたる麦藁帽子を、あふのけざまに戴き…………」。

以下えんえんと、書生の服装を詳しく説明しています。たとえば、「書生羽織」という言葉があったように、明治の時代には、書生ならではの服装があったらしい。
書生が出てくる小説に、『魔睡』があります。森 鷗外が明治四十二年に発表した物語。ここでの「魔睡」は、今の「催眠術」に似た言葉だったようですね。

「書生も下女も勿論遠ざけて、独りで遣つてゐるのである。」

これは、森 鷗外の分身かと思われる、大川 渉の様子。旅の準備をしているのです。

「そこら中に書物やシヤツなどを……………」。

これはどんな「シヤツ」なのか。

「カラアやカフスやハンカチイフなど……………」。

とありますから、付け襟式のシャツかと思われます。時と場合によっては、ディタッチッド・カラーのシャツがあっても良いのではないでしょうか。まさかそれで書生になれるわけでもないでしょうが。

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