牡丹とボウ

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牡丹は、美しい花ですよね。その美しさはよく女の人にも喩えられます。
「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」。
あるいは、また。
🎵 牡丹のようなお嬢さん、尻尾出すぜと、浜松屋……………。
歌の文句にも出てくるくらいに。もっとも元は歌舞伎の『白浪五人男』の一場面からきているわけですが。
そうかと思えば美味しい「牡丹」もありまして。「ぼたん鍋」。ぼたん鍋という名の猪鍋。むかしは大ぴらに「猪」と口にするのが憚れて、「ぼたん鍋」と言いかえたんだそうです。
花の牡丹の本場は、中国。中国での牡丹は、「花の王」とされるらしい。
中国、宋に時代に、『洛陽牡丹記』が書かれています。著者は、欧 陽脩。この中に。

「しかし洛陽でつくられているものが今日では天下第一である。」

ほぼ同じ時代に。宋 張邦基は、『陳州牡丹記』を書いていて。

「しかし陳州ほど盛んで、また多種なのは他にない。」

まあ、お国自慢とはそんなものでありましょう。いずれも自分の邦の牡丹が最上と言っているわけです。
三島由紀夫の短篇に、『牡丹』があります。物語の主人公が友人に誘われて、牡丹を観に行く話。ただし三島由紀夫のことですから、あっという結末が用意されているのですが。
一方、三島由紀夫の長篇に、『暁の寺』が。もちろん『豊饒の海』のひとつなのです。この中に。

「梨枝が焦茶のサマー・ウーステッドのズボンと、ワイシャツと、ごくこまかい茶の水玉模様のボウ・タイとを持つてきて、傘下の卓の上に置いた。」

これは、「本多」が會に出るために着替える場面。
ボウ・タイ、いいですね。ことに水玉模様は。ただし、はるか牡丹のお美しさにはおよびもつきませんが。

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