火焔太鼓とカノピー

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火焔太鼓は、落語の題目ですよね。時代背景は、江戸末期。でも、『火焔太鼓』はあまりに有名なので、ここにあらためて紹介するのは、恥ずかしいほどではありますが。
『火焔太鼓』を今のような形に仕上げたのは、五代目 古今亭志ん生の技と言っていいでしょう。事実、志ん生の十八番でもありました。志ん生の『火焔太鼓』は、まさしく名人藝でありましたね。
『火焔太鼓』の主人公は、古道具屋の甚兵衛。甚兵衛は、商売上手とは正反対の性分で、いつも売り損ねてばかり。
ある時、古太鼓の埃を払っているうちに、手が滑って、音が鳴って。その太鼓の音を殿様に耳に入って、さあ、たいへん。殿様が甚兵衛を屋敷に呼んで。殿様は目利きで、「国宝級の太鼓じゃ!」と。なんと三百両で買ってくださる。
これで調子に乗った甚兵衛。「音が鳴るものが………」と。今度は、半鐘を仕入れようとして。おかみさんに叱られる。
「半鐘はダメだよ。すぐにオジャンになっちまうから」。
これが『火焔太鼓』のサゲになっています。
落語がお上手だった作家に、永井龍男がいます。永井龍男は若い頃、「文藝春秋」の社員で。社内の宴会があると必ず、菊池 寛からお声がかかる。
「おい、永井君、一席やれよ」
その一席、まことに巧みで、ちゃんとおあしが頂ける代物だったという。
永井龍男の短篇に、『傘のありか』があります。この中に。

「軽いだけでなく、ピーンと張った絹の具合が、いい気持だろう」

「大原」という男が、自分の、英国製の傘を自慢している場面。張り布が、絹なんですね。
一度、シルク・カノピーの傘を持って、寄席に行きたいものですが。

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