かもめと開襟シャツ

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かもめはロシア語で、「チャイカ」なんだそうですね。ロシア語にまったく不案内なのに、どうして「チャイカ」だけ知っているのか。チェホフのおかげです。ロシアの作家、アントン・チェホフの。
『かもめ』は、チェホフの戯曲。名作であります。チェホフの戯曲には、『ワーニャ伯父さん』、『三人姉妹』、『桜の園』とあって、これに『かもめ』を含めて、「チェホフの四大戯曲」とされるんだとか。
1896年10月17。ペテルブルグ、「アレクサンドリンスキイ劇場」で、『かもめ』の幕が開く。チェホフはいつになく、役者の演技に不安を持っていたようで。チェホフは開幕の前に、こんなことを役者に言っています。

「皆さん、芝居がかったことは必要ありません。必要なのは、自然なこと。ほんとうに自然であることです。」

このチェホフの不安は的中したのですしょうか。1896年10月17日の「アレクサンドリンスキイ劇場」は、嘲笑の渦となったのです。
チェホフはひとりで劇場を出て、一晩中、ペテルブルグの街を歩いた。チェホフは一睡もしないで、故郷に帰る。一枚の書き置きを遺して。

「僕は、メリホヴォに帰ります。戯曲の印刷はしないでください。僕は、二度と戯曲は書きません。」

10月17日の夜。ペテルブルグを歩いたために、チェホフは胸の病を悪化させたと、考えられているそうですが。
でも、『かもめ』は1899年5月1日。「モスクワ芸術座」で再演されて、拍手喝采。これ以降、チェホフの代表作となったのであります。
かもめが出てくる小説に、『ブレヒトの愛人』があります。『ブレヒトの愛人』は、2003年に、ジャック=ピエール・アメットが発表した物語。ただし物語の背景は、戦後間もなくのドイツにおかれているのですが。

「<かもめ>クラブはあらゆる公式文化人が集い、おしゃべりをし、新聞を読み、情報を交換しあう場所である。」

かもめはかもめでも、クラブの名前なんですね。また、『ブレヒトの愛人』には、こんな描写も出てきます。

「窓から射しこむ光が彼のグレーのスーツと、きっちりとアイロンがけされた白い開襟シャツを浮かび上がらせている。」

これは、ハンス・トロウという人物の着こなし。
「きっちりとアイロンがけされた白い開襟シャツ」で、かもめを見に行くとしましょうか。

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