白鯨とパッド

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

白鯨は、小説の題名ですよね。アメリカの作家、ハーマン・メルヴィルが、1851年に発表した物語。今からざっと150年ほど前の小説ですから、古典と言って良いでしょう。
優れた作家であったサマセット・モオムは、1954年に『世界の十大小説』を刊行しています。
たとえば、スタンダールの『赤と黒』。たとえば、フローベールの『ボヴァリー夫人』。この世界の十大小説のひとつに、『白鯨』が選ばれています。アメリカ人作家としてはただひとり、ハーマン・メルヴィルが入っているわけですね。
ハーマン・メルヴィル自身、以前、捕鯨船の乗組員であったからこその、『白鯨』でありましょう。そしてもうひとつには、ハーマン・メルヴィルには「奇遇」があったのです。
1841年12月のこと。ハーマン・メルヴィルは、「アクーシュネット号」に乗っていた。もとより、捕鯨船。この「アクーシュネット号」は、海の上で偶然に、「チャールズ・キャロル号」に出くわして、交歓。この「チャールズ・キャロル号」の船長こそ、オウェン・チェイスその人だったのです。
オウェン・チェイスは、1819年に、「エセックス号」の一等航海士だった人物。ナンタケットの「エセックス号」は、謎の巨鯨と闘って、沈没させられた船。その時の数少ない生き残りが、オウェン・チェイスだったのです。
ハーマン・メルヴィルは、甲板でたしかに、オウェン・チェイスを見た。でも、話しかけるまでには至らなかった。しかし、1819年の「巨鯨」の物語はなんとしても書く、とのおもいは湧いてきた。それが、1851年の『白鯨』へとつながってゆくわけですね。
ハーマン・メルヴィルが、1853年に書いた小説に、『バートルビー』があります。この中に。

「ごく上等の燕尾服を「七面鳥」に進呈してやりました ーー これがまた、綿のパット入りの、灰色の服で……………」。

「七面鳥」は、友人の仇名。1853年頃の「ごく上等の燕尾服」には、「綿のパット」が入っていたものと思われます。「パット」は和製英語。正しくは、「パッド」pad でしょう。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone