モナリザとモヘア

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モナリザは、名画ですよね。今さら説明の必要はないでしょう。誤解をおそれずに申しますと、世界でもっとも有名な絵画ではないでしょうか。
『モナリザ』は少なくとも、もっともよく引用された名画でしょう。たとえば、「謎の微笑」だとか。

🎶 モナ・リサ、モナ・リサ………………。

1950年に、ナット・キング・コールが歌って、拍手喝采となった『モナリザ』の歌い出し。今、レコードで聴くと、どうしても「モナ・リサ」に聴こえてしまうのですが。現在ではスタンダード・ナムバーになっていること、ご存じの通り。
レオナルド・ダ・ヴィンチが、『モナリザ』を描いたのは、1503年ころのことではないかと、考えられているようですね。そもそもの『モナリザ』は、今のものより左右がもっと広かった。モナリザを中央に、その左右に門柱が描かれていた。けれども今日の『モナリザ』では門柱部分は削られているのだ、と。
もっとも、その一方で、『モナリザ』は未完の絵であるとも。さらには、ダ・ヴィンチは複数の『モナリザ』を描いていたのだ、との説もあるようです。つまり『モナリザ』自体が、謎の名画なのでしょう。
『モナリザ』についてのはじめての記述は、『美術家列伝』なんだそうですね。ジョルジョ・ヴァザーリの。1550年に、フィレンツェで出版された『美術家列伝』。この中に。

「ディテールの正確さに、脈拍さえ聞こえそうな…………………。」

そのような形容があるという。なるほど。それもまた、名画たるゆえんなのでしょう。
英國での『モナリザ』といえば、『ジョコンダの微笑』があります。1922年に、オルダス・ハックスリーが発表した小説。

「あなたのジョコンダの、つまり謎めいたモナ・リザのような微笑………………………」。

これは、ミス・スペンスについての形容なんですが。
日本でも、1919年に、松岡 讓が、『モナ・リザ』を書いています。もとより、創作。

「レオナルドは十餘年前のヂヨコンダ夫人モナ・リザの記憶を喚び起こした。」

それで、ダ・ヴィンチは、ひさびさにジョコンダ家を訪ねるという物語になっています。
モナリザが出てくるミステリに、『指はよく見る』があります。1945年に、ベイナード・ケンドリックが発表した物語。

「彼女はモナリザのような微笑を浮かべてデニスの部屋を出、しずかにドアを閉めた。」

「彼女」とは、マーシャ・フィルモアのこと。また、『指はよく見る』の中には、こんな描写も出てきます。

「縞のあるモヘア織りのグレイの服の下には、がつしりした幅広い肩があつた。」

これは、ウォルター・クレーンという男の様子。たぶん、モヘアのスーツなんでしょうね。
モヘアは、アンゴラ山羊の毛で織った、光沢の美しい素材。
モヘアのスーツを着て、私の「モナリザ」を探しに行きたいものですが。

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