家具とカフ

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家具は、家に置いて使う道具のことですよね。家の中の道具。それで、「家具」なんでしょう。
鏡台、三面鏡、衣桁、脇息………………。これ皆すべて家具であります。
家具はなにも道具と決まったわけでもなくて、音楽でも。たとえば、『家具の音楽』。エリック・サティが、1920年に作曲した室内楽譜の題名。
『家具の音楽』は、たしかに曲の題でもあるのですが、サティの音楽に対する考え方でもあったようですね。
「音楽は家具のようであるべきだ」と。そこに置いてあっても邪魔にならない音であるべきだ、と。
サティ作曲の『家具の音楽』をはじめて演奏したとき。サティはあらかじめ、言った。
「どうか皆さん、演奏がはじまっても、そのままになさっていてください。くれぐれも、お願いします。」
でも、実際に『家具の音楽』が奏でられると。観客は一ヶ所に集まって、静かに耳傾けた。その時のサティのひと言。

「さあ、皆さん、さっきのようにおしゃべりをお続けください。」

エリック・サティは、フランスの港町、オンフルールが生んだ、偉人にして奇人でありましょう。
ある時、サティは、ジャン・コクトオに言った。

「レジョン・ドヌールを拒否することが大切なのではない。あらゆる賞を受けることがないように身構えていることが、大切なのだよ。」

ジャン・コクトオは後に、「アカデミー・フランセーズ」の会員に選ばれて、たいへん喜んでいるのですが。
オンフルールが生んだもうひとりの、偉人にして奇人。アンリ・レニエがいます。

「生活? そんなものは執事に任せておけばよいではないか。」

アンリ・ド・レニエは、そんなことを言ったらしい。
アンリ・ド・レニエは、1864年12月28日。オンフルールに誕生しています。
一方、エリック・サティは、1866年5月17日に、オンフルールで産声をあげています。つまり、アンリ・ド・レニエが、二歳ほどお兄さんだったことになります。
アンリ・ド・レニエが、1905年に発表して小説に、『生きている過去』があります。すべてにおいて古典的であることを好んだ、レニエらしい物語になっています。この中に。

「ド・ジェルシー氏は、ブロー氏のモーニング・コートの折返しを引っぱっていた。」

これはひとつの想像なのですが。ターンバック・カフ t urn b ack c uff
のデザインを指してのことではないでしょうか。
ターンバック・カフの歴史は、古い。中世からすでにあったようです。乗馬用外套の袖口とかに。時には、このターンバック・カフに密書を入れたりも。
なにかターンバック・カフのある上着を着て。サティのレコオドを探しに行くとしましょうか。

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