ナイトとナッシュ

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ナイトは、騎士のことですよね。むかし『夜の騎士道』というフランス映画がありました。たしか、ジェラール・フィリップの主演だったような記憶がありますが。
日本に武士道があったように、西洋にも騎士道があったのでしょう。
ナイトは、フランスなら「シュヴァリエ」でしょうか。中世のフランスに、『夜警の騎士』という題の歌があったんだそうですね。
中世のフランスでは、騎士の夜警ということがあった。今の時代なら、警察署の役目でしょうか。
馬に乗った騎士が町を廻って、安全を確認する。その様子を歌ってので、『夜警の騎士』。

こんな夜更けに誰が通るの
マジョレエヌの騎士さま
こんな夜更けに誰が通るの
陽気に河岸を

『夜警の騎士』は、そんなふうにはじまるうただったという。でも、どうしてここに、「マジョレエヌ」が出てくるのか。
マジョレエヌは、フランス語。私たちのいう、「マジョラム」。ハーブのひとつ。料理に使ったりも。
昔むかし、フランスの上流階級では、若いお嬢様のいらっしゃる屋敷には、ベランダにマジョレエヌの鉢植を。
お嬢様ですからめったに外にお出にならない。でも、お外は見たい。そこで、「マジョレエヌにお水を」ということにして、ベランダに。お嬢様は時によって騎士を見ることも。騎士はお嬢様を見ることも。
それを歌ったのが、『夜警の騎士』だったんだそうですね。
『夜警の騎士』が出てくる小説に、『リトル・ドリット』があります。1847年に、イギリスのディケンズが発表した物語。

あれこそは騎士の華
マジョレエヌの騎士さま
あれこそは騎士の華
いつも陽気に!

ということは、十九世紀の英國でも『夜警の騎士』は知られていたものと思われます。もちろんフランスからイギリスへと、伝えられていたわけです。
また、『リトル・ドリット』には、こんな描写も。

「その腕前たるや、かの粋人ボー・ナッシュが六頭立ての馬車を乗り回していた黄金時代に、社交界で振った腕にもひけをとらないほどであった。」

これは、「クリップル先生」の様子。
ボオ・ナッシュ B e a u N ash は、1674年に生まれ、1762年に世を去った英國の洒落者。本名、リチャード・ナッシュ。
十八世紀はじめのバースは温泉と賭博で栄えた町で。必ずしも安全でも清潔でもなかったらしい。
ここに登場したのが、リチャード・ナッシュで。バースでの規則をつくって、安心できる社交場に変えた。そこで、人呼んで「キング・オブ・バース」とも。もちろんご本人は、たいそう洒落者でもあったという。
十八世紀のバースには、「夜警の騎士」は必要なかったかも知れませんが。

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