ハード・チーズとハード・ハット

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ハード・チーズは、硬いチーズのことですよね。
あまり硬くないのが、ソフト・タイプのチーズ。
ソフト・タイプとハード・タイプの中間に、セミ・ハード・タイプがあります。
イギリスのハード・タイプに、チェダー・チーズがあるのは、ご存じの通りです。
Ch edd ar と書いて、「チェダー」と訓みます。
南イングランドの、チェダー村、チェダー峡谷に近い場所の特産だったものです。
チェダー・チーズそのものは、古代ロオマの時代にまで遡るという。ただし、今のように、
「チェダー・チーズ」の名前で呼ばれるようになったのは、十六世紀のことなんだそうですね。
生まれたてのチェダー・チーズは、セミ・ハード。まったくのクリイム色。ところが熟成が進むにつれて、ハード・タイプのチーズとなるんだとか。
やや赤みを帯びた「レッド・チェダー」もよく知られているところでしょう。
あのレッド・チェダーは、「アナトー」での着色。アナトーの原料は、ベニノキの種。
チェダー・チーズは、「チェダーリング」によって造られます。
チェダーリングは、大量の牛乳が自然に沈澱するのを待って、造られるのです。牛乳の沈澱はエキスの塊となって、これをレンガのように積み重ねることで、チェダー・チーズの原型となるのです。
では、チェダー・チーズはどうしてあんなに美味しいのか。牛の食事が良いから。本来のチェダーは、野生のクローバーやキンポウゲを食べて育つのです。
今なお、昔通りの牛の育て方、チーズの造り方をしているものを、「フェルミ・チェダー」の名前で呼ばれます。
たとえば、英国、サマセット州に、「チェダー・ジョージ・チーズ」という酪農家があります。ここでは昔ながらのチェダー・チーズを造っているとのことです。

チェダーの話が出てくる小説に、『情事の終り』があります。1951年に、英国の作家、
グレアム・グリーンが発表した創作。

「………チェダー洞窟のあの山高帽子のように、お談義の滴の下で化石になることはできない。」

これは物語の主人公の戀人の日記の一部。日記の日付は、1944年7月10日に設定されているのですが。
つまり、『情事の終り』は、1944年の倫敦が背景になった小説なのです。
また、『情事の終り』には、こんな描写も出てきます。

「………雨は、彼の硬い暗色の帽子の上に降りそそぎ、官吏らしい黒い外套を滝のように流れ落ちていた。」

これは友人の「ヘンリ」という人物の様子として。
おそらく原文は、「ハード・ハット」なのでしょう。
帽子もまたチーズと同じように、ハード・ハット、セミ・ハード・ハット、ソフト・ハットがあります。
ハード・ハットの代表者は、シルク・ハットと、ボウラー・ハット。この場合の「ヘンリ」の帽子は、ボウラー、山高帽かと思われます。
1944年の、雨の日の「官吏」がシルク・ハットをかぶるとは思えませんから。
ボウラーは雨に強く、シルク・ハットは雨に弱くもありますし。
どなたか今日的なハード・ハットを作って頂けませんでしょうか。

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