シャンペンとシャンタン

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シャンペンは、シャンパンのことですよね。もう少し正確に申しますと、「シャンパーニュ」でしょうか。
あるいは昔風の表現でしたなら、「三鞭酒」。「三つの鞭」ではなんのことだかわかりませんが、単なる宛字。「三鞭」と書いて「シャンペン」と訓ませたのでしょう。
「三鞭酒」とも書き、「シャムパン」ともお書きになったお方に、内田百閒がいます。事実、内田百閒は、『三鞭酒』と題する随筆をも書いています。
内田百閒にはもうひとつ、『おからでシャムパン』の名作もあるのですが。要するに百閒先生は三鞭酒がお好きだったのでしょう。
内田百閒はどうして三鞭酒とお近づきになったのか。飛行機との関係から。軽飛行機。その昔、内田百閒は学校の「航空研究会」の会長だった時代があって、それで三鞭酒と親しく。
これには少し説明が必要でしょうか。
飛行機には飛行機の「進空式」があったんだそうですね。推進式と同じように。新しい軽飛行機が空に舞う前に、空での安全を祈って三鞭酒を割ったものなんだとか。
でも、軽飛行機自体はそれほどお飲みにならない。後は人間様の口に入ったんでしょう。

シャンペンが出てくる戯曲に、『やけたトタン屋根の上の猫』があります。1955年に、
テネシー・ウイリアムズが発表した演劇。
原題は、『キャット・オン・ア・ホット・ティン・ルーフ』。『熱いトタン屋根の上の猫』と訳されることもあります。

「ケーキには蝋燭がともり、シャンペンの壜の首には、繻子のリボンが結わえつけてある。」

田島 博訳の「ト書き」には、そのように出ています。これは、「おじいちゃん」の誕生日なので。アイスバケットに冷やした何本ものシャンペンが運ばれてくる様子として。
『やけたトタン屋根の上の猫』は、1955年の「ピューリッツァ賞」と、「ニュウヨーク劇評家賞」とを受けてます。ブロードウェイでの、ロングラン。
1958年には、映画化もされています。主演のマーガレットには、エリザベス・テイラーが。夫役のブリックには、ポール・ニューマンが。
映画でのエリザベス・テイラーの白いスリップ姿が印象的でありました。
そういえば、「ベビードール」。ベビードールには、「寝室着」の意味もあります。これは、1956年の映画『ベビードール』と関係があります。エリア・カザンの監督。ただし、原作はやはりテネシー・ウイリアムズだったのですね。
この『ベビードール』の中で、キャロル・ベイカーが着た「寝室着」にはじまっているのです。
戯曲、『やけたトタン屋根の上の猫』を読んでおりますと、こんな科白が出てきます。

「………あのローマでつくらせた山東絹の取っておきの背広 ー あれ、出しておいたわ……………。」

これはマーガレットが夫のブリックに対しての言葉として。
ここでの「山東絹」は、シャンタンのことかと思われます。シャンタン sh ant ung は紬ふうの絹地。昔、中国、山東省で織られたので、その名前があります。
もともとの「シャンタン」は、野蚕。ふつうに家で育てる「家蚕」とは別に、天然自然の蚕から得られる絹糸。野蚕なので、やや不規則なむら糸に。それで織り上げた時、「節」が飛ぶ。趣味人がその「野趣」がよろしいというので、流行したものです。
どなたかシャンタンのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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