コーヒーとバスク・シャツ

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コーヒーをゆっくり味わう時間は貴重なものですよね。

また一杯のコーヒーから何かが浮かび、何かがはじまりことも。そういえば昔、『一杯のコーヒーから』という流行歌がありましたね。

話は1957年頃のNY。ある日、ジャック・レモンが一杯のコーヒーを飲んでいた。「サルディ」という名のレストランで。もっともジャック・レモンに言わせると、エスプレッソだったそうですが。食後のデザートとコーヒー。

と、その時、ジャック・レモンの肩を叩く男が。ふっとふりかえって見上げると、ビリー・ワイルダーが立っている。もちろん、初対面。

「ミスター・レモン。私の次回作に出演していただきたい。」

これでジャック・レモンは『お熱いのがお好き』に出ることになるんですね。『ビリー・ワイルダー イン・ハリウッド』に書いてあります。ジャック・レモンは『ビリー・ワイルダー イン・ハリウッド』の「まえがき」に筆を執って、ビリー・ワイルダーとの出会いをそんなふうに語っているのです。

その頃のジャック・レモンは。『ミスタア・ロバーツ』には出演していましたが、少なくとも人気絶頂ではなかった。むしろ『お熱いのがお好き』以降に、急上昇。そのジャック・レモンに注目していたビリー・ワイルダーはさすがというべきでしょう。

ビリーとジャックには共通の趣味があって。流行歌。ジャック・レモンに言わせると。「ビリーは1900年以降のアメリカのポピュラー・ソングは全部知っていた。」とか。

『アパートの鍵貸します』の時に。ビリーがジャックに言う。「どうしても使いたい曲がある」。で、そのメロディーを口ずさむ。ところがビリーは音程を外すことにおいて、天才。ビリーのメロディーがジャックには解らない。解らないのだけれど、なんとか想像を働かせて、やっと曲を摑む。それが今の「アパートの鍵貸します」の主題歌なんだとか。

『お熱いのがお好き』と同じく1959年に発表されたミステリに、『死はわが踊り手』が。コーネル・ウールリッチ晩年の物語。この中に。

「一人は縞模様のジャージーの半袖のシャツを着ていた。バスク・シャツといわれているもの。それに、いきなヨット・キャップ。」

なるほど。バスク・シャツにヨットキャップは合うでしょうね。少なくとも1950年代のアメリカでは、バスク・シャツを着ることがあったのでしょう。

好みのバスク・シャツを着て、好みのコーヒーを飲みに行くとしましょうか。

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