ワインとディナー・ジャケット

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ワインは美味しいものですよね。

ワインといえば、たいてい「ブラインド」の話になったりするものです。つまり、目隠し当て。
ワイン・グラスに注がれた液体を、眺め、香りを嗅ぎ、ひと口舌の上に転がせて、そのワインの氏素性を当てる。ブラインド・テスト。ごく稀に、そのような魔術師がいらっしゃるんですね。

たとえば、リシーヌ。リシーヌはワインのブラインドにおいて、いかんなくその才能を発揮したという。百発百中、美事だったと伝えられています。

アレクシス・リシーヌは、もともとロシア人。1913年のお生まれ。その後、家族ともどもフランスに。フランスからアメリカに渡って、その国籍を得ています。

1951年に、アレクシス・リシーヌは『フランス・ワイン』を出版。これが売れに売れるんですね。それで、と言って良いのかどうか、フランスの葡萄畑を買う。カントナックの、「シャトー・プリュレ」を。そして名づけたのが、「シャトー・プリュレ・リシーヌ」なんですね。

フランスのカントナックは、かの有名なシャトー・マルゴーが造られるあたり。
シャトー・マルゴーが出てくる小説に、『武器よさらば』が。ヘミングウェイが1929年に発表した物語。

「中尉さんにはマルゴーの小壜を持ってまいりましよう。」

これは「グラン・イタリア」というレストランでの様子。ヘミングウェイがイタリアでシャトー・マルゴーを飲んだのは、まず間違いないでしょうね。

『武器よさらば』が、イギリスの「ペンギン・ブックス」の一冊となるのが、1935年頃のこと。1936年のミステリに、『アラビアンナイトの殺人』が。ディクスン・カーの作。舞台は、ロンドン。この中に。

「内ポケットの裏側には、《 ゴーディアン 、イギリス風紳士服仕立て師 、パリ 、ブールバール、マルセブル 二十七 》 というラベルが縫いつけてあります。」

これは、レイモンド・ペンデレルという男のディナー・ジャケットの描写。1930年代のパリには、「イギリス風紳士服仕立て」を謳うテイラーがあったんでしょうか。

いつの日にか、きっとディナー・ジャケットを着て。美味しいワインを飲みに行きたいものですが……。

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