ストロー・ハット(straw hat)

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真夏の昼の夢

ストロー・ハットは麦藁帽子のことである。麦藁で編まれた帽子の総称。麦藁以外でも麦藁に似ているものであれば、「ストロー・ハット」の名前が使われたりもする。

ボーター ( カノティエ ) もまた、ストロー・ハットの一種。ただしボーター ( カンカン帽 ) の場合、編んだ後で熱と力とを加えて、堅く仕上げるのが特徴。

ストロー・ハットは、英語。フランシスでは、「シャポー・ド・パイユ」chapeau de paille 。イタリアでは、「カッペロ・ディ・パーリア」 cappello di paglia となる。

『OED』 ( オックスフォード英語辞典 ) によれば、straw hatは正しくはその間にハイフンが入るのであるらしい。それはともかく英語としての「ストロー・ハット」は、十五世紀からすでに用いられているとのこと。

ストロー・ハットの歴史は麦の歴史と同じくらいに古いのではないか。麦があり、麦穂があれば、藁もあるはずで、それを使って編むことは自然発生的に起こったに違いない。古代エジプトにも麦があり、麦によるパンがあったそうだから、なんらかの麦細工もあったものと思われる。

古代ギリシアには、「ペタソス」 petasos というツバの広い帽子があったことが知られている。ペタソスには大きく分けて二種あって、フェルト製と、ストロー製との。フェルト製のペタソスは冬向きであり、ストロー製ペタソスは夏向きだったのだろう。

ペタソスは古代ローマにも伝えられて、クラウンの小さい、ブリムの大きな帽子で、頭に被らない時には、顎紐で背中に吊るしておいたのだ。

ペタソスは、ラテン語で「旅行用帽子」を意味する「ペタスス」 petasus と関係しているのであろう。いずれにしても古代ギリシアの時代から、ストロー・ハットは存在していたのである。

「裏に絵柄のあるキャリコーを張ったストロー・ハット……」。

これは1696年『ロンドン・ガゼット』の記事の一節。1690年代の英国に、キャラコの内張りのあるストロー・ハットがあったと、考えて良いだろう。

「ストロー・ハットをかぶり、フランネルのジャケットを着、白いトラウザーズを穿いた何人かの紳士達が……」。

ディケンズ著『ピクイック・ペイパーズ』 ( 1837年刊 ) に出てくる一文。1830年代のロンドンで、「紳士達が」ストロー・ハットを被ることがあったのだろうか。

では、パリではどうだったのか。1876年にルノワールは、『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』を描いている。ここではたしかに多くの男たちが、シャポー・ド・パイユを被っている。

1881年にはルノワールは、『舟遊びをする人々の昼食』を描いている。夏の盛りなのであろう。皆、盛夏の服装。そこでの会話が聴こえてくる絵。そしてここでも男たち女たちもシャポー・ド・パイユを被って、食事を愉しんでいる。もちろん、戸外のテントの下で。この絵をスケッチするルノワールもまた、麦藁帽子を被っていたのかも知れない。

1882年にロートレックは『セレーランの若きルーティ』のスケッチを仕上げている。この絵の「ルーティ」は、明らかにツバ広の麦藁帽子を頭に乗せている。

また1890年には、 『ロートレックを描くロートレック』と題するコラージュを遺している。ここにはふたりのロートレックがあらわれていて、頭にはシャポー・ド・パイユを被っているのだ。少なくとも世紀末のフランシスで麦藁帽子が流行ったことは疑いようがない。

「ストロー・ハットは階級を超えることに成功したひとつの例である。肉屋で働く店員から、舟遊びをする優雅な紳士まで。モーリス・シュヴァリエのようなボードヴィリアンから、パブリック・スクールの学生に至るまでの。」

ポール・キアーズ著『紳士のワードローブ』 (1987年刊) には、そのように書いてある。たしかにストロー・ハットはクラスに関係なく愛される帽子となっている。

「ストロー・ハットは暑い時期にはほとんど理想的な帽子である。ストロー・ハットは頭にかぶって軽く、風通しも申し分ない。( 中略 ) 男は夏にストロー・ハットをぜひかぶるべきである。」

ハーディ・エイミス著『ファッションのABC』( 1964年刊 ) には、そのように出ている。ストロー・ハットはなにも構えて被る帽子ではない。自然に、あるがまま被れば良い。千年以上も前の旅人がそうしたように。

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