福島とソンブレロ

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福島駅というのが、大阪にあるんですってね。この福島駅の近くに商店街があって。福島聖天通商店街。

そうは言っても、1970年代の話なんですが。その頃、福島聖天通商店街の一画に、小さな古本屋があった。この古本屋の前をある男、偶然通りかかる。

とりあえず古本屋の前を通り過ぎる。通り過ぎるんですが、なにか気にかかる。で、戻って古本屋に入る。そして永年探していた、『鑢』を見つけたという。

『鑢』は、1924年に、フィリップ・マクドナルドが発表した物語。1970年代には、幻の本になっていたんですね。その男は、臼田惣之助。臼田惣之助はかつてミステリ評論家だった人。

「百円玉一枚の勘定を済ませ、商店街の通りに出た時は思わず大声で叫んで走り出しそうになるのを堪えるのに必死だった。古本との付き合いは長いが、その時ほど興奮した記憶は他にない。」

『ライノクス殺人事件』の解説の中で、臼田惣之助はそんなふうに書いています。『ライノクス殺人事件』は、1930年の、フィリップ・マクドナルドの作。

「椅子 ( 同、その位置 ) の上で「ソンブレロ」型の黒い帽子が発見された。内側の帯に「B・マーシュ」と書かれている。」

ある事件の現場に、この帽子が遺されていたという説明。

ソンブレロ sombrero は説明不要でしょう。スペインやメキシコなどで被られる、クラウンが高く、ブリムの広い帽子のことですよね。でも、「ソンブレロ」型とある。

これはどうも「ガウチョ・ハット」のことではないか、と。ガウチョ・ハットは、スペインのカウ・ボーイが愛用した帽子です。クラウンもブリムも直線的なスタイルが、特徴。

ガウチョ・ハットかソンブレロを被って。福島駅を再訪してみたいものですが……。

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