シャンパンとコロン

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シャンパンに「ブリュット」がありますよね。たいてい壜のところに「ブリュット」と書いています。もちろん辛口のこと。シャンパンは辛口を頼むのが、粋なことになってるみたいですね。シャンパンの長い歴史からすれば、ブリュットはそれほど古いことではありません。辛口シャンパンが飲まれるようになったのは、1880年代以降のこと。それまでは甘口シャンパンが常識だった。それも今からすれば、大甘口のシャンパン。
それが辛口になったのはひとつには、英国人の好みからなんですね。「もっと辛口のシャンパンが飲みたい」の声応えて。
でも、ランスでは誰もそんな非常識なシャンパンを造ろうとはしない。たったひとりの例外が、ルイーズ・ポメリー。ルイーズ・ポメリーは会社の全員が反対する中で、ブリュットを。1870年のこと。でも、誰も辛口シャンパンには振り向きもしない。
ところが1874年になって。最上の辛口シャンパンが。これが、大人気に。かくしてルイーズ・ポメリーはランスの、シャンパン界の偉人となるわけですね。
1890年3月16日。ちょうど誕生日の日にルイーズは世を去る。ルイーズの葬儀はまるで国葬のようであったという。
シャンパンが出てくる小説に、『ふらんす物語』が。もちろん、永井荷風。ここには明治四十年ころの巴里が描かれています。

「「シャンパンがよかろう。極く上等な奴を……」」

これはあるレストランで「竹島」という人物がシャンパンを頼む場面。また、こんな描写も。

「コロン水、顔へ塗るクレエム、髯剃りの後でつける白粉なぞ……」

これは主人公、「貞吉」の身の周りにある品々。「コロン水」はたぶん、オーデコロンのことでしょう。おそらく若いころの永井荷風は巴里でオーデコロンを愛用していたのでしょう。
今日はひとつオーデコロン抜きで、シャンパンを飲みに行くとしましょうか。

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