ポール・スミス展 「HELLO,MY NAME IS PAUL SMITH」…..東京・上野の森美術館で開催

ウインザー公は、紳士服飾の20世紀のスタイルやトレンドに大きな影響と功績を残した。それは21世紀の現代でも、燦然と輝き続けている。そんなウインザー公へのオマージュも込めて、選びぬいた情報や製品をセレクトしてお伝えします。

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今回のポール・スミス展は、2013年にロンドンのデザイン・ミュージアムで既に開催された彼の展覧会で、今年(2016年)になり日本に上陸した。

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BIRDCAGEの当時のショップカードの展示

現在、約70の国や地域でポール・スミスのブランド商品は展開されている。
そもそも同ブランドの誕生は1970年、イギリス・ノッティンガムの「Bird Cage」と言うブティック内に、わずか3×3m 程の窓の無い小さな店舗(恐らくストックルームのようなバッグヤード)から始まった。その時のポールは24歳、因みにBird Cageは1965年創業の Janet Campbell による経営で、エドワーディアン・ファサードのテイラーを新しい感覚で表現した店舗、20歳頃のまだ自分自身の店舗を作る以前のポールは、ここで働いていた。加えてBird Cageはカーナビー ストリートにも出店を果たしている。

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混雑するポール・スミス展会場を入ると、額装されたあらゆる写真等が壁面を埋め尽くす。この一見秩序なき展示こそがポール・スミスの直感を支えているようだ。

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ポール・スミスがファッションに目覚めた当時は、ロンドンではモッズからサイケデリックの絶頂期、それはユース カルチャー的なポップミュージックが既に大きなビジネスとなり、ファッションと音楽が融合したスウィンギング・ロンドンと呼ばれた時期。そんな時代感へのオマージュ的なフラワープリント等のシャツの展示も…..そう、この時代感覚こそが、かつてポール・スミスも熱狂したナイジェル・ウェイマウスのブティック「Granny Takes a Trip」(1965年12月にオープンしたサイケデリックを象徴した店舗)を彷彿とさせる、まさにフラワープリントはリスペクトそのものだろう。また、今日までのポール・スミスの成功は、かつてのジョン・スティーヴン(1950年代中頃から数々の店舗をカーナビー ストリートに出店、大成功した人物)の手法にも共通するようにも思える。なぜならば、当時のジョン・スティーヴンはポップスターやモッズ志向の顧客達にフィットしたタイトなジャケットやボトムス、様々なデザインやカラフルなシャツ、さらに花柄シャツを最初に販売していたからだ。

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日常的なオフィスを再現した展示では、数多くの商品企画に関する材料が机や壁面に展開され、クリエイターとしての探究心が垣間見える。しかし、ポール氏自身はデスクワークをあまり好まなかったようだ。つまり、こうした資料や材料を求めてアートブックの店、アンティークショップや、海外等を巡っている時々のインスピレーションを重視していたとの事。

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多くの実績を残してきたポール・スミスではあるが、特に一般的にも知られているのが「マルチストライプ」。1998年にミニ「アート カー」を発表、この大胆な発想は服装品だけに拘らない、次の時代への大きな革新となった。また、異業種の製品も含めたコラボレーションも数多く手掛けている。

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これまでのポール・スミスの仕事等を展覧会形式で自己表現した「ポール・スミス展」は、ブランドの神格化をユーモアを交えて詳細に表現。これにより製品購入者へのブランドの魅力的再認識を図ると同時に、新たな付加価値を生み出す事にもなるのは間違いないだろう。
英国GQ誌の編集長Dylan Jones氏はポール・スミスを「マッド プロフェッサー」と呼び、彼の優れているところを「生まれ持った才能」「激烈な野望」「探究心の強い性格」「人との接し方」と評価している。
現在70歳になったポール・スミスは、多くのスタッフの前で、次のように語りかけている。「この世界には、新たに開拓できるビジネスは残っていない。なぜなら、今の世の中は、物が溢れ何でも手に入る時代になってしまったから。だから僕たちは、君たちは、アイデアについて賢くならねばいけません」。
ポール氏の言う「アイデア」とは、今後の時代を生き抜く上での、とても重いキーワードであり、人生を楽しむ上での大切な要素である事を改めて実感する。そんなポール・スミス展でもあった。

東京の展示は8/23まで。その後、9/11から10/16まで名古屋で開催。

『ポール・スミス展 HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH』
東京・上野の森美術館
2016年7月27日(水)~8月23日(火)
名古屋・松坂屋美術館
2016年9月11日(日)~10月16日(日)
(※京都はすでに終了)
公式WEBサイト:http://paulsmith2016.jp/index.html

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