ボレロとボタン

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ボレロは、着丈の短い上着のことですよね。着丈は短くても袖はちゃんとあって、前ボタンはありません。前ボタンを留めことなく羽織るところに特徴があります。
よく幼稚園生の制服にも見られるものです。また、その一方で、スペインの闘牛士が着る華やかな上着も形の上では、ボレロといえるでしょう。
ボレロは上着でもあれば、音楽でもあります。ボレロ形式の名曲は少なくありません。が、中でも有名なのが、ラヴェル。モオリス・ラヴェルが1928年に作曲した『ボレロ』。
『ボレロ』の初演は、1928年11月22日。巴里の「オペラ座」で。これはイダ・ルビンシュタインの舞踏のための音楽だったのです。というよりも、イダ・ルビンシュタインが、ラヴェルに依頼して、完成された名曲。
モオリス・ラヴェルが当時、とびきりの洒落者だったのは、なんどもお話している通りです。そのモオリス・ラヴェルを小説に仕上げたのが、ジャン・エシュノーズ。2006年刊の、『ラヴェル』がそれであります。この中に、ラヴェルが、アメリカに出発する場面が描かれているのです。秘書がラヴェルの自宅に車で迎えにくるところ。

「ラヴェルはゆっくりとプジョーに乗り込み、座るとほっと息をはいて、ズボンの折り目を膝のところでつまんで折り目がくたびれないよう軽く持ち上げる。第一ボタンを外しながら、彼は、さて、そろそろ出ようか、と言う。エレーヌは彼の方を向くと素早く頭から爪先までを点検する。リネンの靴下と絹のポケットチーフは、いつもながらネクタイと組み合わせてある。」

うーん、やるものですね。
「第一ボタンを外しながら……………………。」
これも、大切なこと。車に乗ったなら、第一ボタンを外して。ラヴェルの『ボレロ』を聴くといたしましょうか。

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