競売とキッド

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競売は、オークションのことですよね。時に、「競買」と書くこともあります。
競売は、「競わせて売ること」。競買は、「競って買うこと」。まあ、結果においては同じことでありましょうが。
競売で有名なものに、「サザビーズ」があります。同じく「クリスティーズ」が。私などはクリスティーでご縁あるのは、アガサ・クリスティーくらいのものでありますが。
2009年、ロンドンの「サザビーズ」が、『十四歳の小さな踊り子』を競売したことがあります。『十四歳の小さな踊り子』は、1880年にドガが完成させた塑像。つまり絵ではなくて、彫刻。
サザビーズはこの『十四歳のせい小さな踊り子』の競売のために、何をしたのか。ブロンズ像のモデルになった踊り子によく似た女性を探して、彫刻の隣に立たせたのであります。
その結果、『十四歳の小さな踊り子』は、約十七億円で売れたという。
そのモデルとなった「踊り子」は本物で。ロンドンの「ロイヤル・バレエ学校」の生徒だったのです。そして「彼女」は、1880年にドガが求めたであろう同じポーズをとったのであります。まあ、十七億円のためには、これくらいのことは…………………。
ドガをほとんど唯一、尊敬したのが、ロオトレック。ロオトレックとドガの間には、ひとつの共通点がありました。それは、絵を売る必要がなかったこと。ロオトレックの家系は、大貴族。ドガの家系は銀行家だったから。
では、なぜ、晩年のドガは絵を捨てて彫刻に移ってのか。それは、ドガの視力の衰え。ベートーヴェンの難聴に似た災難が老練のドガを襲ったのです。

「厚みのない、量感のない、立体感のない輪郭しか描けず……………………。」

1897年頃、ドガは、ティエボー=シッソンに対して、そのように語ったという。ドガが、いかに「絵の量感」を大切にしていたかを物語っているではありませんか。
競売が出てくるミステリに、『怪盗対名探偵』があります。もちろんフランスの作家、モオリス・ルブランの作。

「競売はパリでも有名なドルーオ会館の大ホールで行われたが………………」。

「ドルーオ」で、稀少なブルー・ダイヤモンドが競売に。もちろん、創作。ただし、「ドルーオ」は今なお現存します。
『怪盗対名探偵』には、こんな描写も。

「ルパンはしずかにドアをしめ、絹帽子をぬいでテーブルにおき、おちついて白キッドの手袋を脱ぎながら………………」。

正装用手袋の素材には、キッドがふさわしいと考えられています。薄く、フィット性が高いので。
キッドはまた、極上の靴の材質にもなります。繊細なのが欠点ですが、しなやかで、よく光ります。
もし、今、総キッドの靴が競売にかかると、すぐに売れることでしょうね。

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