アラベスクとアリゲーター

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アラベスクは、アラビア風の意味ですよね。arabesque
と書いて「アラベスク」と訓むんだそうです。
アラベスクと題につく名随筆に、『匂いのアラベスク』があります。1980年に、澁澤龍彦が発表した匂いについての文章です。

「まだ血の匂いがする。いくらアラビアの香水をふりかけても、この手は気持よくなりそうもない。おう、おう、おう」と嘆くところは誰でも知っている有名な場面である。

澁澤龍彦は『匂いのアラベスク』の中に、そのように書いています。
もちろんシェイクスピアの『マクベス』の一節。
また、澁澤龍彦はこうも書いています。

「アラビアといっても、ここでは東洋一般をさしていると考えてよい。」

つまり、シェイクスピアの時代、英国では東洋の香水が用いられていたのでしょう。
澁澤龍彦はさらに歴史上の三大香水愛好家の名前をも挙げています。

「クレオパトラ」。「エリザベス女王」。「カトリーヌ・ド・メディチ」。

香水の歴史を語る上で、この三人の名前は欠かせないのでしょう。

アラベスクが出てくるハードボイルドに、『さようなら、愛しい人』があります。1940年に、レイモンド・チャンドラーが発表した物語。日本語訳は、村上春樹。

「………日光が祭壇についた階段にアラベスク模様を描いていた。」

これは探偵のマーロウが占い師の邸宅を訪問する場面でのこと。
また、『さようなら、愛しい人』には、こんな描写も出てきます。

「プリーツのついたグレイのフランネルのズボンに、アリゲーターの靴………」

これは「ムース・マロイ」の着こなしとして。
どうしてチャンドラーは、わざわざ、「プリーツのついた」と書いたのか。
1940年代のアメリカでは「プリーツのズボン」は禁止されていたから。もうこれだけで「只者ではない」と解ったでしょう。
アリゲーターは鰐の一種。クロコダイル種の鰐もいれば、アリゲーター種の鰐もいるというわけです。
どなたかアリゲーターのスリップ・オンを作って頂けませんでしょうか。

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