アフタヌーンとアンゴラ

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アフタヌーンは、午後のことですよね。アフタヌーン・ティーは午後の紅茶でしょうか。
では、「ヌーン」 noon とは何か。英語の「ヌーン」は、ラテン語の「ノナ」nonaから来ているんだとか。「九番目」の意味。
つまり日の出から数えて九番目の時間帯という意味だったんだそうですね。
アフタヌーンは、おしゃれ語でも使われます。たとえば、「アフタヌーン・ドレス」だとか。イヴニング・ドレスまではいかない装いのこと。着丈もフル・レングスでなくとも良いのです。
男の服装なら、ダーク・スーツでしょうか。ダーク・スーツにホワイト・シャツ。シルヴァー・グレイのネクタイといったあたりでしょう。

アフタヌーン・ドレスが出てくる小説に、『アヴェ・マリア』があります。谷崎潤一郎が、大正十一年に書いた短篇。

「そして一日に二度や三度は、身ぎれいなアフタヌン・ドレスに着換へて、寝間着姿でゐる時よりはたしかに十も若く見えるレデイーになつて、何処かへ出かけたかと思ふと直に帰つてくる。」

これは「早百合子」という女性の行動について。
谷崎潤一郎は、「アフタヌン・ドレス」と書いているのですが。
谷崎潤一郎の『アヴェ・マリア』を読んでいますと。

「此の間も山下町のカフエ・タハラヤへコーヒーを飲みに行つたら………」

そんな一節が出てきます。大正十年頃の横濱、山下町には、そんな珈琲店があったのでしょうか。

アフタヌーン・ドレスが出てくる自伝に、『上海ラプソディー』があります。和田妙子の伝記。和田妙子は、戦前の上海で、「マユエラ」の名前で、人気のあったダンサーのことです。

「一週間後。ドルマン・スリーブのアフタヌーン・ドレスと、オリーブのツーピースが出来上がってきた。袖を通したら………やっぱりいい。デザインもいいけれど、着心地が絶品!

和田妙子は『上海ラプソディー』の中に、そのように書いています。もちろん、上海で衣裳を誂える場面として。
和田妙子は、戦後になって、帰国。新橋で高級クラブの「マヌエラ」を開いていた時代もあります。
それはともか、昭和十年代の上海を識る上では、貴重な自伝だといえるでしょう。

ベビィが店員に聞くと、アンゴラ毛糸というのだそうである。
「こんなの東京で見たことない!」
私はなけなしのお金をはたいて、そのブルーのセーターを衝動買いていた。

「アンゴラ」 angora はモヘアのこと。
アンゴラ山羊の繊維は、絹にも似ています。
どなたかアンゴラのブルウのスェーターを編んで頂けませんでしょうか。

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