ウイットとウインクルピッカーズ

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ウイットは、機知のことですよね。機転の効いた会話のことでしょうか。wit と書いて、「ウイット」と訓みます。
よく、「ウイット・アンド・ワイズダム」なってことが言われるんだそうですね。「機知と知識」。人前で話すには、「機知と知識」とが必要ですよ、と。たしかに、そうであって欲しいものですが。私の場合、機知もなければ、知識もなくて。恥ずかしいばかりです。

ウイットが出てくる読物に、『ある愛書狂の告白』があります。著者は、ジョン・バクスター。1939年に、シドニーに生まれた作家。
ただし『ある愛書狂の告白』は、小説ではありません。事実。つまり、著者のジョン・バクスター自身が、愛書狂なのですから。
シドニーの、ジョン・バクスターの実家は、パン屋で、隣が図書館。ある日、偶然に図書館への抜け道を発見。少年の頃から、図書館に忍びこんでは、読書三昧。やがて大人になってからは、ブック・ハンターに。
とにかく目当ての本がありそうな所なら、パリでもロンドンでも見境なくかけつけるのですから、ご自分で「愛書狂」と言いたい気持もよく分かります。

「ニコラスとサイモンの話は面白くウイットに富んでいた。キングズクロスという場所柄、グロテスクな人々が行き交い、ゴシップの好ニコ客はひきも切らない。」

ジョン・ハンターは『ある愛書狂の告白』の中にそのように書いてあります。
ニコラスとサイモンは、兄弟の古書店主。
ジョン・バクスターは、この店から、単に本を買うだけでなく、売ることも。とにかく世界中の本屋を回っているので、それぞれの需給バランスまでもが分るのでしょう。もうこうなると、セミプロの古書マニアだと言えそうですが。
このセミプロ級のジョン・バクスターにも「先生」がいて。マーティン・ストーン。

「マーティン・ストーンは私の助言者かつ教師かつ友人となり、それは今も変わらない。」

ジョン・バクスターは、そのように書いています。
マーティン・ストーンは、以前、プロのギタリストだった人物。一時期、エリック・クラプトンと肩を並べる存在でもあったという。
それがひょんなことから古書の世界にのめり込むことに。今やブック・ハンターの中での「先生」になっているらしい。

「私が「グレアム・グリーン病」に罹ったのは、一九七八年の冬だった。」

ジョン・バクスターは『ある愛書狂の告白』に、そのように書いてあります。この「病」はますます募っているようですが。
グレアム・グリーンの著作。それも並ではなくて、まずは人が持っていないようなグレアム・グリーンの本が欲しくて欲しくて。愛書狂。困ったものであります。
ジョン・バクスターの『ある愛書狂の告白』を読んでいますと、こんな描写も出てきます。

「だがマーティン・ストーンのかびくさいベレー帽とつま先のとがったウインクルピッカー・ブーツは伝説だった。」

「ウインクルピッカーズ」 winkle pickers は、1960年代のロンドンで流行った靴のこと。たいていはアンクル・ブーツ式のものでしたが。
どなたか1960年代のウインクルピッカーズを再現して頂けませんでしょうか。

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