テノールとティロリアン

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テノールは、テナーのことですよね。テノールは、ドイツ語、テナーは英語なのでしょうか。
男声としては張りのある高音部。tenor と書いて「テナー」と訓みます。あるいははまた、「テノール」とも。
これはラテン語の「テネーレ」 tenere から出た言葉なんだとか。その意味は、「長く保つ」の意味であったという。
その昔、「我らがテナー」と呼ばれた男が、藤原義江。明治三十一年に、大阪で生まれています。お父さんはイギリス人だったと伝えられています。
若き日の藤原義江を支えたお方に、吉田 茂がいます。大正十年頃のことです。吉田 茂が、英国の日本大使館にいた時代に。

「………日英の有力者に働きかけてくれた。」

藤原義江の自伝『藤原義江』に、そのように出ています。
藤原義江を、吉田 茂に紹介してくれたのは、当時男爵だった、一条実基だったという。
1921年11月4日に、藤原義江は一条男爵と一緒に、ロンドンの日本大使館を訪ねています。
11月10日、「茶の会」と称して、コンサートを。この時に歌った『荒城の月』が拍手喝采。

「君は日本人なんだから、日本の歌も歌うべきだ。」

吉田 茂は、そのように言ったそうですね。

「(第一高音と第一低音)の合ひつ乱れつ、消えつ起りつする具合は、心の波の打騒ぎ、情の海の湧返るさまを写して、殆ど余す処がない。」

永井荷風の『歌劇フォースト』に、そのような文章が出てきます。これは1907年1月1日、ニュウヨークで、オペラ『ファウスト』を観ての感想として。
永井荷風は「第一低音」と書いて、「テノール」のルビを添えています。

テノールが出てくる小説に、『武器よさらば』があります。1929年に、ヘミングウェイが発表した物語。この中に。

「ピアチェンツァ劇場は、北イタリアでは一番歌いにくい小屋だね」と、もう一人のテノール歌手がいった。

これはテノール歌手同士が会話している場面として。

アーネスト・ヘミングウェイは、1948年になって『武器よさらば』に、「序文」を添えています。この中に。

「………チロル人風の毛皮の上衣の帯皮とか、その他目立ったかっこうを、まっすぐ張った綱なり横木の棒なりにつけずに、いざりくぐっていかなければならない競技である。」

これはアーネスト・ヘミングウェイが、1945年、アメリカのアイダホ州で、遊んだゲームの様子なのです。この時には、女優のイングリッド・バーグマンも居たんだそうですが。
「チロル人風の毛皮の上衣」。気になりますねえ。もっとも冬のティロルは寒いですからね
どなたか毛皮のティロリアン・ジャケットを作って頂けませんでしょうか。

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