ギリシアとギンガム

ギリシアは、国の名前ですよね。
英語なら、「グリース」Greece でしょうか。
では、どうして「グリース」の言い方が生まれたのか。これはフランス語の「グレイシア」Graecia から来た言葉なんだそうですね。
ギリシア人自身は自分たちの国のことは、「ヘラス」と呼んだ。ここから「ヘレニズム」の言い方もあるわけですが。
ギリシアからはじまっている言葉も、少なくありません。
たとえば、「オリンピック」。これは「オリンポス山」に因んでいます。標高、2917メートル。もちろんギリシアでの最高峰の山。
「マラソン」。マラソンはその昔の「マラトンの戦い」と関係のある言葉。
ペルシア軍がギリシアの「マラトン」に上陸して、これをギリシア軍が撃ち破ったので、後に「マラソン」と。
牡蠣は英語で「オイスター」。これはギリシア語で牡蠣の殻を意味する「オストレオン」がもとになっているんだそうですね。
「スパルタ教育」もまた。「スパルタン」。もともとは「スパルタ人」の意味。スパルタ人は質実剛健だったので。
大正四年に、ギリシアに旅した考古学者に、浜田青陵がいます。浜田青陵には、『希臘紀行』の随筆があるのは、そのためです。

「次の朝は汽車の出発も十時四十分というので、ゆるゆる起き上つて、前のカフェーに行つて茶とトーストで朝げを認める。是また二人で半ドラヒマの勘定。」

前の日の夕食は二人で二ドラヒマ半だったとも書いています。
一ドラヒマは今の百円でしょうか、五百円でしょうか。とにかく驚くほど安い値段だったのでしょう。
ギリシアでの朝食は、よく「クルリ」を食べます。
クルリはリング状の丸いパン。ドーナツに似ていなくもありませんが、揚げてはいません。でも、クルリの上には白胡麻がたっぷりかかっているのが、特徴。もちろん、そのままでも食べますが。横に二つ切って、サンドイッチにすることも多い。
また、代表的ギリシア料理に「ムサカ」があるのは、ご存じの通り。
ムサカはパイ状のひと皿。挽肉を中心に、玉葱やポテトがたくさん入っていて、健康食でもあります。
ムサカを食べる時、飲みたくなるのが、「ウゾ」。ギリシアならではの無色透明のスピリッツ。ただし度数も40度前後あって、強い酒。たいていは水で割ってから、飲む。無色透明のウゾに水を注ぐと、一瞬にして白濁。爽やかな香りが魅力的な飲物ですね。
ギリシアの話が出てくる短篇に、『リジーア』があります。
1840年代に、エドガー・アラン・ポオが発表した物語。

「それは私にとって今やレダの二つの星となった。」

レダが、ギリシア神話に登場する白鳥であるのは、言うまでもないでしょう。
同じく1840年代にポオが書いた短篇に、『ミイラとの口論』があります。この中に。

「桃色のギンガムの肌着と、縁のついた錦襴のチョッキと、白い麻の外套と、」

これはドクトル・ポノンナフの服装として。
1840年代のアメリカに、ギンガムの肌着があったのでしょうね。
どなたかギンガムgingham のシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。