パブリック・スクールとパンス・ネ

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パブリック・スクールは、英国の私立校のことですよね。「パブリック」の言葉からつい「公立」を想うのですが、私立の学校。
たとえば、イートン。たとえば、ハロー。たとえば、ラグビー。たとえば、ウインチェスター。たとえば、ウエストミンスター……………。
かのウインストン・チャーチルは、ハロー校に学んでいます。ハロー校から「サンドハースト」に進んでいます。サンドハーストは、陸軍士官学校。
学問の道に進む場合は多く、オックスフォードやケンブリッジに進学することになるわけです。つまり英国のパブリック・スクールは、日本の中学、高校に相当する教育機関ともいえるでしょう。
ところが。英国のパブリック・スクールに進む生徒の中には、小学校を出ていない場合が珍しくはないのです。それというのも、良家の子弟が多いので、家庭教師をつける。小学校で学ぶ部分は、家庭教師から教えてもらう。ですから、いきなりパブリック・スクールということも珍しくはないのです。
パブリック・スクールは基本的に、寄宿制。ですからどうしても暮しの様子までも、似てきて。いちばん分かりやすいのは、言葉、話し方、アクセント。同じ英国人が耳にすると、たったひと言で、パブリック・スクール出身者であることが解るという。
パブリック・スクールが出てくるミステリに、『ピカデリーの殺人』があります。1930年に、アントニー・バークリーが発表した物語。

「ベルモットのカクテルをちびちびやっているパブリック・スクールの生徒二人が………………」。

これは、「ピカデリー・パレス・ホテル」の、ダイニング・ルームでの様子。物語の主人公、アンブローズ・チタウイックが彼らを眺めている場面。たとえ遠くからでも、「パブリック・スクールの生徒」ということが、解るのでしょうね。
『ピカデリーの殺人』には、こんな描写も出てきます。

「はなはだ寸詰まり鼻に金縁の鼻眼鏡をかけ……………」。

これもまた、アンブローズ・チタウイックの姿。物語の中での探偵役という設定になっています。つまり探偵の、チタウイックはパンス・ネをかけているわけです。
「パンス・ネ」もともと、フランス語。「鼻に挟む式の眼鏡」のこと。そのフランス語をイギリスでもそのままに使うので、「パンス・ネ」。
時にはパンス・ネをかけて、パブリック・スクールの歴史でも学ぶとしましょうか。

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