スモークとスモーキング

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スモークは、燻製のことですよね。燻製もまた料理の有効な手段でありまして。煮る、焼く、蒸す、炒めるだけでなく、燻らすも料理法のひとつであります。
たとえば、スモーク・ソーセージとか。スモーク・ハムだとか、スモーク・チーズだとか。あるいは有名なところでは、スモークト・サーモンがあります。サーモンは焼くより煮るより蒸すより、絶対スモークだと、おっしゃる方少なくないようです。
スモークといえばハイカラでが、なに日本にだって昔から燻らしがないわけではありません。一例を申しますと、いぶりがっこ。秋田の特産ということになっております。いぶりがっこはもちろん、「スモークト・タクワン」に他なりません。
上物のいぶりがっこを薄く切って、酒の供にいたしますと、果てのないものでございます。ほんとうのいぶりがっこは、囲炉裏でつくる。囲炉裏で炭を熾し、湯を沸かし、煮炊きする。で、忘れた頃に天井裏から沢庵を取り出すと、摩訶不思議、黄金のいぶりがっこへと変身しているのであります。
二十一世紀の今、本物のいぶりがっこを食べようと思ったなら、一軒の日本家屋からはじめなくてはなりません。昔ながらの日本家屋に囲炉裏を切って、炭を焚べる。あとはもうただひたすら、待つだけのことであります。
話は変わりますが、サルトルは第二次大戦中、徴兵されています。一軍人として出兵しているのです。
またしても話が変わるのですが。サルトル Sartre は、ラテン語のsartor と関係なきにしもあらず。サルトルは「仕立屋」といえなくもないのですね。
「仕立屋」サルトルは戦場で、スモーク・ハムを食べています。

「木の皿の上にヴェストファーレンのハムが出される………………」。

戦場なので、「木の皿」。「ヴェストファーレン」は、北ドイツのスモーク・ハムなんだそうですね。サルトル著『自由への道』には、そのように出ています。また、こんな描写も。

「トゥールでは黒いタキシードの紳士たちがホテルの廊下を走りまわっている。」

『自由への道』の原文は、フランス語。「タキシード」はたぶん「スモーキング」であるはず。フランスではタキシードのことを、「スモーキング」。
これは英語の「スモーキング・ジャケット」曲解された結果なのですが。
ディナー・ジャケットを着て、美味しいスモークハムを食べたものですね。

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