ホテルとボンバジーン

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ホテルは、宿のことですよね。少し古い言い方ですと、「旅籠」でしょうか。
HOTEL は今や国際語で、世界の至るところで「HOTEL」の看板は、宿泊の目印になってくれます。
フランスの、巴里でのよく知られている宿に、リッツが。フランス風には、「オテル・リッツ」でしょうか。第一、環境がよろしい。ヴァンドーム広場にあって、まわりは一流宝飾店が軒を並べています。また、有名店の多い、フォーヴル・サント・ノーレもすぐ近い。宝飾品をたくさん買って、ひと息入れるには恰好の旅籠でしょう。
オテル・リッツに泊まるのは、夢ですが。オテル・リッツにお暮しになったのが、シャネル。1940年代の第二次大戦をはさんで、シャネルはリッツに暮したものです。
同じリッツの宿泊客として、偶然、シャネルが知り合ったのが、ディンクラーゲ。ドイツ人紳士。ハンス・ギュンター・ディンクラーゲであります。年齢は、シャネルのほうが十歳ほどお姉さんではありましたが。1940年頃のこと。
しかし、第二大戦もやがて終りに。1944年8月25日のことです。この日を境に、すべてが変ってしまう。
ディンクラーゲンは、「スパイだったのではないか」とか。1944年頃の巴里で勢力を持っていたのは、アメリカ兵。シャネルは居なくなった、ディンクラーゲを探すために、アメリカ兵に頼った。そのための見返りが、「シャネルの五番」だったのですが。
ホテルが出てくるミステリに、『栄光の土曜日』があります。

「オテル・ドゥ・パリです」 とセニョール・サントスが言った。

これは、スペインの、マドリッドでの話。『栄光の土曜日』の著者は、スペイン人の、デイヴィッド・セラフィンなので。1979年の作。また、『栄光の土曜日』には、こんな描写も出てきます。

「ベルナルはセルソ・ガルシーアで買い求めた絹のネクタイを指先で整えながら、地味なボンバジーン姿の妻のからだをすっぽり包んだ。」

ボンバジーン b omb azin e は、絹の綾織地。多くは、黒無地に仕上げられるものです。
ボンバジーンが似合いそうな淑女を、どこかのホテルに探しに参りましょうか。

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