ティーとティケット・ポケット

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ティーは、紅茶のことですよね。日本に緑茶があるように、英国には、紅茶があります。
もちろんtea と書いて、「ティー」と訓むわけですね。
茶も、ティーも、もともとを辿れば、中國にはじまっています。つまり「ちゃ」もティーも古くは親戚だったのです。
フランス語で、「テ」 thé というのも同じことであります。
紅茶と緑茶、どちらが古いのか。緑茶。つまり中國からイギリスに伝えられるよりも前、日本に齎されているからです。
ただし、茶がいつ日本に伝えられたのかについては、いろんな説があるのですが。
たとえば、天平元年に、すでに茶会が行われていた、とか。天平元年といいますと、西暦の729年ですからね。
あまりにも有名な話としては、建保二年の、源 實朝の話があります。
建保二年の二月。源 實朝が宿酔に苦しんでいる時。僧の榮西が、
「良薬にござります」といって、茶を飲ませたんだそうですね。
松浦静山の古書『甲子夜話』の中に。

「………茶は遊戯なれども、武辺の心得こもることなり……………。」

と、出ています。
茶会は、神経を澄まして、すべての物事に注意しておかなくてはならない。これは武道の心得にも通じるものだ、と書いてあるのです。
まあ、そんなわけで、茶の源は中國にあるわけですが。その昔、中國に、「猿茶」というのがあったという。
揚子江のほとりに、洞庭湖があって。ここの雑木林に一本の、自然の茶の木が生えていて。この木に、よく訓練した猿を登らせ、ひと摑みの茶を。これにて飲む茶を嗜んだ。ゆえに、「猿茶」とか。まあ、いつの時代にも、凝る人はいたんでしょうね。
好きな紅茶のひとつに、ロイヤル・ミルク・ティーがあります。ポットではなく、鍋で淹れる、ミルクたっぷりの紅茶。これをイギリスでは、「インディアン・ティー」と呼ぶんだそうです。インド式紅茶。
紅茶が出てくるミステリに、『ドイツの小さな町』があります。
1968年に、ジョン・ル・カレが発表した物語。

「ティ・ポットの蓋をあけると、紅茶の色が鮮やかだった。」

場所は、ドイツのボンに置かれているのですが、主人公の、アラン・ターナーが英国人なので、紅茶は欠かせないのでしょう。
アラン・ターナーは。英国外務省の、公安部員と設定されていますから、時には家探しも。

「………上着の腰の部分を細く絞り、右側の中ごろに小さなポケットが一つついている。」

これは、おそらくティケット・ポケットだろうと、思われます。
もともと切符を入れておくためポケットなので、ティケット・ポケット。
1880年頃の、アルスター・コートにはじまったものです。
1880年代の英國では、列車で旅に出るのは、特権階級だったから。
今も、ティケット・ポケットは古典的な匂いのするものですが。要するに、かつて列車での旅が、地位の象徴だった時代への郷愁なのでしょうね。
どなたか腰をはっきり絞った、ティケット・ポケット付きのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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