アリザリンとアルスター

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アリザリンは、染料の名前ですよね。
al iz ar in と書いて、「アリザリン」と訓むんだそうですね。
アリザリンはまた植物の名前でもあって。つまりは「茜」のこと。
アリザリンの根には色素があって、これを煮詰めて染料にすると、文字通り、「茜色」に染まるんだとか。
「茜根」が茜色の染料になることは、少なくとも古代ギリシア時代に識られていたようですから、古い。
今でも、「茜雲」と言いますね。あれはいうまでもなく、「茜色の雲」の意味。つまり少しオレンジがかった赤のことなのです。
明治元年に、合成アリザリンが考えられて、それ以降は天然アリザリン染料はほとんど用いられることがないそうです。
天然アリザリンでは、染めて乾かし、染めて乾かし……………。これを百回以上繰り返して、やっと望みの色に近づいたんだそうですね。
アリザリンが出てくる小説に、『鬘下地』があります。明治三十二年に、小栗風葉が発表した物語。

「アリザリンオレンジのシヨールを抜き衣紋にして、肩も顕の唯蔑ろに引纏ひつ。」

これはショールの色の形容として用いられているわけですが。
『鬘下地』には、こんな描写も出てきます。

「濃紺綾ネルトンの衿幅狭き両前形のアルスタコートに……………………。」

小栗風葉は、文中「ネルトン」と書いているのですが、あるいはメルトンのことかと思われます。『鬘下地』は、明治三十二年ですから、その時代には、「メルトンのアルスター」があったのでしょう。
どなたか明治三十二年のアルスターを、もう一度再現して頂けませんでしょうか。

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