ヤーンとヤッケ

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ヤーンは、糸のことですよね。糸があるから、生地が生まれるわけです。
縦糸と横糸を織り成すことで、一枚の布となるのは、いうまでもありません。たいていの服は布から作られることを考えると、まずはじめに糸ありき、とも思えてきます。
麻糸、木綿糸。これらは、植物繊維。絹糸、羊毛糸。これらは、動物繊維。その他にはたくさんの獣毛繊維があります。
ことに、ラウンジ・スーツは、ウール・ヤーンが用いられることが多い。なぜ、ラウンジ・スーツには、ウールが最適であるのか。その理由は、少なくありません。が、最大の理由は、柔軟性。
というよりも、いわゆる「イセ」が効くから。一枚の布地を、必要に応じて、伸ばしたり縮めたりが、ある程度自由だから。
つまり、それがウール地であるかぎり、縫い合わせる以前に、生地自体に立体性を持たせることが可能なのです。これは全体のシルエットの表情、豊かさを考える時、まことに有利ではあります。
ラウンジ・スーツには、ウール素材の意味が、お分り頂けることでしょう。
羊毛、つまりウールの歴史は、古い。たとえば、十二世紀のスイスでも、牧羊が盛んであったという。

「そしてその飛躍の中心になったのが、羊毛紡績だったことを記す。」

犬養道子著『私のスイス』には、そのように出ています。『私のスイス』は、昭和五十七年の、刊行。

「そしてその飛躍の中心をなしたのが、羊毛産業だったことを記す。」

そのようににも、書かれています。
犬養道子は、スイスで時計産業の主だった人物にも、インタヴュウをしています。スイス時計産業は、どのように考えているのか。

「非大衆・非大量生産主義に徹してゆくこと。」

このインタヴュウは長いのですが、煎じつめれば、そういうことなのです。なぜなら、スイス時計産業は、これまでの長い歴史の中で、「非大量生産主義」でやってきたのだから、と。
犬養道子は、スイスで当然のように登山にも挑戦しています。やはり、高山は思ったよりも、寒い。

「やはり安物のセールのヤッケなどは買うものではない。」

と、後悔しているのですが。
「ヤッケ」j ack e は、ドイツ語。直接には「ジャケット」のことですが、実際には「アノラック」an or ak に近いものでしょう。
アノラックは、もともとグリーンランドの防寒服。風を防ぐために、前開きが、頭を通せるだけしか開いていないのが、最大の特徴。本来は、アラザンの毛皮で仕立てたんだそうですね。
ごくごく厚手のウール地で、アノラックが仕立てられないものでしょうか。

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