レストランとレザー・ジャケット

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レストランは、西洋料理店のことですよね。レストランに行けば西洋の美味しい食事を頂けることになっています。
restaurant と書いて、「レストラン」と訓みます。もともとはフランス語。今ではほとんど世界語のような印象があるのですが。
フランスでのレストラン誕生は、十八世紀のことなんだとか。レストランの前には、「レストラトゥール」と呼ばれる時代があったらしい。
十八世紀フランスでの「レストラン」は、濃厚な、滋養に富んだスープの意味だったそうです。そのスープである「レストラン」を飲むと、病人でも元気快復する。それで、「レストラン」と呼ばれたらしい。このレストランという名前のスープを提供する店なので、「レストラトゥール」と呼ばれたという。

「病気や疲労に減退した体力を回復させる食物あるいは薬。」

1708年のフュティエールの『大辞典』には、レストランをそのように説明しているとのことです。

では、日本語での「レストラン」は、いつ頃から用いられているのか。さあ。

「中津川に望んで洋食店の出来た事、荒れはてた不来方城が、幾百年来の蔦衣を脱ぎ捨てて、岩手公園とハイカラ化したものである。」

明治三十九年に、石川啄木が発表した小説『葬列』に、そのような一節が出ています。啄木が故郷の変わり方に驚いている場面として。啄木は、「洋食店」と書いて、「レストウラント」のルビを添えているのですが。
たぶんこのあたりが小説に表れるレストランのはやい例ではないでしょうか。

停車場の あまきけむりの まひ来る レストラントの 窓の焼肉

若山牧水が、大正元年に詠んだ短歌のひとつ。若山牧水は、「レストラント」と書いているのですが。これは短歌における「レストラン」のはやい例かと思われます。
この牧水の短歌には後書があって。「五月の末、相模國三浦半島の三崎に遊べり」と、記しています。
明治末期の三崎に、焼肉屋があったのでしょうか。
大正五年に、若山牧水が書いた紀行文に、『旅のふる郷』があります。この中に。

東京の或る繁華な一街路に沿うた西洋料理屋の二階で杯を挙げてゐる一人の青年があつた。」

そんな文章が出てきます。若山牧水は、「西洋料理屋」と書いて、「レストウラン」のルビをふっています。
明治から大正にかけては、「レストウラン」と呼ぶこともあったものと思われます。
レストランが出てくる小説に、『もう一つ国』があります。1962年に、アメリカの作家、ジェイムズ・ボールドウィンが発表した長篇。

「ちゃんとやってるわよ。ずっと向うのダウン・タウンのレストランでウエイトレスしてんの。」

これはレオナという若い女性の科白として。場所の背景は、当時のニュウヨークになっています。また、『もう一つ国』には、こんな一節も出てきます。

「ルーファスは方向を変えて、皮のジャケットの襟を立てながら、七番街を北に向って歩き出した。」

これは物語の主人公、ルーファストの様子として。たぶんルーファスはレザー・ジャケットを着ているのでしょう。
どなたか1960年代はじめのレザー・ジャケットを仕立てて頂けませんでしょうか。

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