モードは、様式のことですよね。
mode と書いて「モード」と訓みます。
英語の「モード」は1389年頃から用いられているんだとか。
ラテン語で「物差し」を意味する「モドウス」
modus から出た言葉だと考えられています。
モード。今では多く「流行」の意味でも使われていること、ご存じの通り。
「横浜から毎夏同じ場所へ出張してくるこの店には、ストック品に交ぜて今秋のモードの先がけも可成りな数が吊してある。」
円地文子が、昭和三十二年に発表した小説『秋のめざめ』に、そのような一節が出ています。
この背景は、夏の軽井沢。今からざっと六十年ほど前にも、似たような光景があったのでしょうね。
モードとくればパリを想うお方も少なくはないでしょう。
パリの最初のデザイナーは、ローズ・ベルタンだという説があります。十八世紀のこと。
ローズ・ベルタン以前は単なる洋裁師。身分が高かったわけではありません。
ローズ・ベルタンは、マリー・アントワネットの衣裳を考案することで、地位が認められたという。
十九世紀のパリで活躍したクチュリエに、ウォルトがいます。Worth と書いて「ウォルト」。
ウォルトはれっきとした英国人だったのですね。
英国式には、チャールズ・フレデリック・ワース。
これがフランスでは「ウォルト」と呼ばれたわけです。
ウォルトは、1825年10月13日に、英国、リンカーンシャーに生まれています。パリに出たのは、1846年、二十一歳の時のこと。
最初「ガジュラン」という高級生地店に勤めて。
ウォルトはこの店で、生きた人間に服を着せて、生地を売ることを考えたのです。
これこそ今のオオトクチュールのはじまりと言って良いでしょう。
モードの国、フランスの作家に、イレーヌ・ネミロフスキーがいます。このイレーヌが1935年に発表した小説に、『孤独のワイン』あるのですね。
「モアレのベルトを締め、糊のきいたモスリンのペチコートに大きく開いた繊細な蝶結びのリボンを二本のピンでしっかり留めていた。」
これは「エレーヌ」の服装について。
「モアレ」moire は、「波目模様」のこと。「木目模様」とも。
フランス語では最後のeの上に、アクサンティギュが添えられるのですが。
今では生地の上に特殊なローラーをかけて、仕上げることが多い絹地。
「モアレ」はもともと、英語。それが後にフランス語になったものです。
どなたかモアレの上着を仕立てて頂けませんでしょうか。